「学振」申請書の書き方について -文系の体験談-(後編)

20210223日(火)
こんにちは
ここ2、3日は春の暖かさですが、
明日からまた寒いそうだと聞いて怯えている林です

今回は、「学振」申請書の書き方の後編について、書いていこうと思います。


-内容-

① 作成スケジュールについて
② 私が悩んだ点
・文系はどうやって図表を入れる?
・専門分野の常識や用語の解説はどの程度すべき?
↑ここまで前半(昨日up)の記事内容

③ レイアウトのコツ
④ 業績欄について
⑤ 参考図書




③ レイアウトのコツ

インターネットで検索してみると、
過去の学振申請書をアップロードしている親切な先輩たちが沢山います。
文系理系関わらず(またPD,科研費申請書でも)、出来るだけ多くの申請書を見て、
その良いところ・悪いところを、自分の中で整理する
作業が最も有効です。
⑤で紹介するような書籍であれば、予め複数の申請書例がまとめられているので楽ですね。

中でも、私が実際に取り入れたレイアウトのコツをご紹介します。


(1) 余白、フォント、図のバランス

審査員は1日に少なくとも数十人分の申請書に目を通すと言われています。
その中で印象に残るためには、関心を持って読んでもらう必要があります。
つまり、レイアウトは「目を通す気にさせる」ために重要なのです。

余白:余白が多すぎると熱量が伝わりにくくなりますが、
   見辛いほど文字を詰めないようにしました。
   項目間はもちろん、各行の文字数の調整も意外と効果的です。
   1行びっしり書いたら次の行はうまく半分以下の文字数で終わらせる、などです。


フォント:明朝かゴシック体が推奨されているようです(読みやすいため?)。
     私は両方使いました。
     基本的な地の文は「明朝体」、太字のみゴシック体を用いました。
     明朝体は太字にすると売りであるスマートな印象がなくなり、
     潰れた印象になると感じた為です。
     また、「太字/下線 = 特に重要な部分=ゴシック体」と把握してもらうこと
     で、「ゴシック体部分を拾い読みしていけば良いのね」と、了解してもらう効果があります。

     ただし、使ったのはその二種類です(英字はCentury)。
     あまり字体を変えると乱れた印象を与えます。


図:前編で例示したように、内容を分かりやすくする為に図表は入れることをお勧めします。
  ただ、どの程度入れるかは全体のバランスを見ながら考えるのが良いかと思います。
  私の場合、「現在までの研究状況」各ページに比較的小さい図をひとつずつ、
  「これからの研究計画」の 研究方法箇所にひとつ、計3つを配置しました。
  いずれも、審査員に「わかってもらわないと困る」部分です。


(2) 箇条書きの活用

箇条書きに用いる文字記号としては、「数字」「○□などの記号」「アルファベットなどの文字」が挙げられます。
それぞれが持つ機能を意識して、レイアウトを組み立てていきます。


「数字」:数字の視覚的な特徴は、「いくつあるか」を把握させるところです。
     例えば、「この研究の独創的な点」を羅列する際に、(1)...(3)としておくと、
     一瞬で「3点読まないといけないんだな」と理解してもらえます。

「○□などの記号」:段落やセクションの区切りに有効です。
          順序や序列をつけなくても良い並列の項目
         (「研究の背景」「研究目的」「研究方法」など)
          には、余計な情報を付与しない形記号が適していると考えました。

「アルファベット」:私は、対応させたい箇所を示す為に使いました。
          例えば、「解決すべき問題点」と「研究方法」では、
          両方の内容の対応する箇所に同じアルファベットを振りました。


例として、実際の申請書の一部です。
アルファベットと、⬛︎の使用例です。
数字はこのページで使っておらず、黒塗りならぬ白塗りで申し訳ないですが・・・
全ページ閲覧希望の方は個人でお知らせください。


林223



④ 業績欄について


分野によって違いがあると思うのですが、
私の分野(音楽学)では、D1〜D2の時点で沢山の業績を持っている人はあまり多くありません。
一般的にも、文系は理系と比べて、学生のうちは業績が少ないのではないかと思います。

いわゆる「業績欄」は申請書の終わりの方にあり、研究者としての資質を判断してもらう材料となります。
書けるのは、学術雑誌掲載の論文・著書、商業誌における解説・総説、国際学会発表、国内学会発表、特許、その他(奨学金や受賞歴はここ)です。

私もあまり業績が多い方では無かったので、過去の例などを見て「う〜ん・・・」と思っていたのですが、
去年から書き方が変更されました!
新しい版では、
「(業績は)網羅的に記述するのではなく、研究課題の実行可能性を説明する上で、その根拠となる文献等の主要なものを適宜引用して述べてください」とあります。

つまり、これまで自分が述べてきた研究課題や研究計画を、遂行できる能力が自分にあるという証拠として、業績を紹介しなさいということです。
数が多ければ良いわけではなく、あくまで自分の研究計画に関連づけて述べよということですので、あまり業績数がない人にとってはむしろ有難い改変と言えます。

昨年度からの改変だったので正解は正直分かりませんが、
私は、欄の上1/3くらいにこれまでの業績についての文章を書き、該当する業績は文章中の(括弧)内に数字で記しました。その後、残りの2/3で、数字で示した業績の詳細情報を註のように記しました。

(例)
文章:「(前略)また、申請者は昨年1年間で、新しい研究課題を2つ設定し、それぞれについて、論文や口頭発表の形で結果を出している(④⑤⑥)。」

業績詳細情報:
④林いのり、「論文名」、『掲載論文集』(査読有り、発行予定日)
⑤林いのり、「解説タイトル」、・・・・
⑥林いのり、「学会発表題目」、・・・・


個人的に気をつけたのは、自分のアピールポイントとして別欄に記述した内容と、
分かりやすく一致する業績を選んで記す
ことです。
私は、特に「演奏・教育現場への還元」をアピールしていた為、
プログラム解説や教育活動の業績も記しました。


⑤ 参考図書について

すっかり長くなってしまいましたが、
最後に参考図書を紹介したいと思います


(1) 毎年LALA文庫で大人気の「How to の決定版」


377.7/O69「学振申請書の書き方とコツ : DC/PD獲得を目指す若者へ」 大上雅史著

私もかなり参考にしました。特に、レイアウト部分は例示が豊富で、自分にあったものを見つけることができます。
申請書例は、ご本人が理系ということもあり理系のものが多いです。


(2) 申請書において大事なことがわかる「科研費申請書の例」

「科研費獲得の方法とコツ ―実例とポイントでわかる申請書の書き方と応募戦略―改訂第7版」児島将康著

こちらも豊富な例示で参考になりました。
改訂を重ねている為、情報も新しいのが魅力です。
eブックなので、家から読めるところも良いですね!


インターネットで検索して読めるものは沢山ありますので、
自分と専門の近い先輩が書いたものを見てみましょう。
もちろん、研究室など身近に経験者の先輩がいれば、
アドバイスを頂くのが手っ取り早いかもしれません。

2021年度、LALAの相談業務が再開しましたらぜひLALAにもご相談くださいね。

最後に、こんなに長々と書いてきましたが、
もちろん!最も大切なのは「研究内容の面白さと社会的な意義」に尽きます。
レイアウトなどを優先するあまり、研究の最も大事な部分についての記述を削ったりしないよう、
できれば周囲の人の客観的な目で確認してもらいながら、
最善の申請書を完成させましょう!


忙しい年度末/新学期に、忘れられない思い出になる、かも・・・・



     
     


「学振」申請書の書き方について -文系の体験談-

20210222日(月)
こんにちは、LALAの林です。
あっという間に2月も半ば・・・ 皆さんいかがお過ごしですか?

今日は、おそらく「旬」な話題、
日本学術振興会特別研究員の申請書作成がテーマです。
ちょうど昨年の今頃、私は申請書を作成すべく参考書や体験談を読み漁っていました。
そこで感じたのは、「文系の例が少ない・・・ということ。

色々な方の情報を参考にしながら作成しましたが、
「もし通ったら申請経験を共有しよう・・・」と思いました。
幸い面接免除採用となったため、この記事を書いています。
以下を念頭に、参考にして頂ければ幸いです。

・一般的なことを書いていますが、林が申請したのはDC2です
・「文系の体験談の1つ」として参考にしていただけると幸いです
・申請書のフォーマットや記入事項は年によって異なる可能性があります



-内容-
① 作成スケジュールについて
② 私が悩んだ点
  ・文系はどうやって図表を入れる?
  ・専門分野の常識や用語の解説はどの程度すべき?

↓ここから後半(近日up予定)の記事へ
③ レイアウトのコツ
④ 業績欄について
⑤ 参考図書



① 作成スケジュールについて

毎年の提出スケジュールは学振HPで見ることができますが、
大切なのは、学内締切の確認です。
来年度は5/17だそうです。(https://www.ocha.ac.jp/research/menu/jsps/special_researchers.html

学振の申請書は全7ページほどで、昨年の項目は以下でした。

・現在までの研究状況
・これからの研究計画:
(1)研究の背景 (2)研究目的・内容 (3)研究の特色・独創的な点
(4)研究計画 (5)人権の保護及び法令等の遵守への対応
・研究遂行能力
・研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等

・・・つまり、一稿仕上げるだけでも時間がかかります。
そして、初稿で仕上がることなどまずありません。

最低でも複数回、指導教授や先輩の添削を受けたいと考え、
逆算していくと・・・

5/17学内締め切り → 5/11申請サイト入力開始? → 5月上旬には2〜3稿を仕上げたい
→ 4月に初稿を完成させ添削を受ける →いつ書き始める?

私は3月に作成を開始し、4/5に初稿を完成させました。
他の方の体験談を読むと、私は遅いぐらいかもしれません。
また、自分が書く場所とは別に、指導教授の先生に書いて頂く箇所もあります。
当然、記入のお願いは早めにしておくべきです。
特に、「評価書」については、
何を書いて欲しいのか前もって先生と打ち合わせておくと、
自分で書く「アピールポイント」と矛盾なく仕上げることができます。




② 悩んだ点1:文系の、図表の入れ方

参考書や体験談は、とにかく「わかりやすく」見せるために図表を入れるように勧めています。が、私は 文章以外には楽譜くらいしか扱わない分野なので、
「何を図表にするべきか」に迷いました

私が採用したのは、
「専門外の人に、文章で理解してもらうのが難しいこと」こそ、図表で表す!
ということです。

例として、私の before(初稿) / after(提出版)をご紹介します。

ここでの目的は、研究テーマの核である、
「朗唱」がオペラの歴史の中でどのように変遷してきたか
を手短に説明することです。


before: 文章のみ

オペラには、劇を進行させる会話部分に用いられるレチタティーヴォ(=朗唱)と、アリア等のより音楽的な歌唱が
形式的に分かれて存在し、その比重は時代と共に変遷してきた。
19世紀に両者が融合し、朗唱と歌唱が混じり合ったシェーナという音楽形態が生まれた。


・・・必要情報を最大限に凝縮した文章ではありますが、
専門外の審査員には「なんじゃこりゃ? とりあえず面白くなさそう」と思われても仕方ないばかりか、次の文章を読まない限り、何に注目しているのかが伝わりにくいですね。

添削で指摘を受け、図を取り入れたのが after バージョンです。


after: 短い文章+図
語る様に歌う朗唱と、歌唱の作品内における比重は時代によって変化し、
19 世紀以降には、両者が融合したシェーナ scena という音楽形態が多用されるようになった。

林2221

※画質が粗くなってしまいすみません・・・


図にしたことで、申請者が「オペラ作品における朗唱と歌唱」に興味があり、
中でも19世紀を対象にすることが、一目で伝わります。
内容を深く理解してもらう前に、この「なんとなく把握できる」という好印象を持ってもらうことが大切です。

また、これは全体に言えることなのですが、
「図表を用いても構いませんので、わかりやすく記述してください」という但し書き=「図表を用いてわかりやすく説明しなさい」と捉るべきです
但し書きは、そのまま審査員が知りたいこと、と考えると間違い無いでしょう。



② 悩んだ点2:研究背景はどの程度説明すべき?

当然、どの研究にもその着想に至るまでの膨大な先行研究など背景があります。
しかし、限られたスペースや、審査員が1つの申請書にかける時間を考慮すると、
あまりミクロな背景ばかり書いても仕方がない。
審査されるのは、「あなたは何をやりますか?」という一点です。

実は私自身、それを簡潔に言葉にすることが苦手です
テーマの周りから説明しているうちに、
本当に自分がワクワクする研究の「核」をうまく伝えられない
という悩みがありました。

そこで活用したのが、「ブレインストーミングです。
自分の研究について、自分が知っていること、何が面白いのか、何が好きなのかを
洗いざらい書き出す作業です。
そこで出てきた無数の言葉(word数ページ分集まりました)から、
自分が本当に面白い!ワクワクする!と思えるキーワードを選び出し、
組み合わせて文章を作って
いきました。

これは、考えをまとめる事に非常に効果的であるだけでなく、
自分の意欲を高め、無駄な言葉を省く方法でもあります。
自動的に、研究の背景についても、必要最低限の記述に絞られてきます。
ついでに、研究の題目を考える際にも有効ですので、是非ともやってみてください。


・・・長くなってきました。

後編では、「業績欄」の書き方やレイアウトについて、
お話ししたいと思います。







テーマやトピックは決まっているけど、どうしたらいいのか分からないとき

20200109日(木)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。
(本日2020年1月9日木曜日11-13時は臨時で在席しています。)

今回はレポートや論文で書くべきテーマやトピックは決まっているけれど、そこからどうしたいいのか分からないときにヒントを見つけられそうな方法をご紹介します。もちろんLALAデスクにも相談にきてくださいね〜。

■ 何から始めればいいか分からない(授業課題からヒントを拾う)
授業で扱ったことのあるトピックならば、授業ノートや課題文献、参考文献としてあげられたものを読み返してみましょう。文献についていえば注釈まで丁寧に読みます。そのなかで、講義を聞いて板書を写したときや、前に読んだときには気づかなかった、論理的な飛躍や説明不足に感じるところはないでしょうか。

授業でやったことを踏まえたうえで何か別のことについて調べて書く課題の場合も、手元にある資料にヒントが埋もれていることはよくあります。学んだあとに読み返すと疑問が湧いてくることも、知識を得て思考が深まったあとに最初からぼんやりと抱いていた違和感が増大することもあります。そういった疑問のかけらを恐れずつかまえるつもりで復習してみましょう。

こうした復習作業は必ずしも一人でやる必要はありません。他の受講生と複数で一緒にやるのもありですよ。

■ 何から読めば分からない(手がかりが多すぎる)
あれもこれもやらなければならない、読まなければならないけれど、どれからやればいいのか分からない。やるべきことは分かっているつもりなのに、優先順位が分からなくて何も始められないときはどうしましょう。

入門書に立ち戻るのも一つの方法です。ここでいう入門書というのは、研究者が自身の専門分野について一般の人向けに分かりやすく書いたもののことです。新書や選書の形態であることも多いので、お茶大図書館の文庫本・新書の棚に行って探索するのもおすすめです。(インターネットには新書マップという楽しいサイトがあるのですが、新書という出版形態が一定の質を保証するものではないことには注意が必要です。)新書で飽き足らない場合は放送大学のテキストの棚も見てみましょう。そしてできれば同じテーマやトピックを扱っている本を複数冊読んでみます。

いくつか集めたら複数の入門書を発表された順に並べ、古いものから新しいものにかけて、繰り返し参照される理論家や研究者による書籍や論文を見つけて、次の調べ物につなげます。

じつはテーマやトピックを決めるときには、課題を仕上げるまでの時間と書き上げる文章の長さで自動的に決まるところがあります。なので、このやり方だと少し大きめのテーマにたどりつくことになります。そういうときは次のやり方はどうでしょう。

■ 1件目の文献を「ちゃんと読む」
もしも課題に取り組むにあたって文献が指定されている場合、あるいはそのテーマやトピックについて書くなら必読とされる書籍や論文が判明している場合、それを読みます。一人の著者による複数の文献が必読なら、発表年の早いものから読んでいくと理解しやすい可能性が高いです。読みきれないほどの数があるのなら、よく引用される短めのものをまずは選んでみます。

文献を「ちゃんと読む」感覚がつかめないときは、読んで書くところまで時間と字数の制限を決めて要旨を書いてみます(たとえば6時間以内で読み終えて1600字以内で要旨を書きあげるところまでやる)。要旨を書きあげたら、じつは知識がなかったり難解すぎて簡潔にまとめられず入れ込むのを諦めたり誤魔化したりした自覚のある部分はないでしょうか。そこから 文章を書く具体的なアプローチにつなげることもできます。「ちゃんと読む」作業をしたあと、あるいは要旨を書いたあとに、ブレインストーミングやフリーライティングといったアイデア出しの手法を試してみるのもいいかもしれません。

ちゃんと読む」ときは巻末註や参考文献リストまで確認することを自分に課します。「確認」というのは少しでも疑問に思うことがあれば元の情報源にあたる、ということです。確認してみたものの、腑に落ちない、もう少し調べたい、きちんと整理して考えたいと思ったところがあれば、そのタネを育ててみます。

■ お茶大図書館の蔵書検索結果を使いこなす
じつをいうとどんな学術データベースを使ったとしても、経験の浅いうちは質の良い優れた論文を探し出すことは容易ではありません。悲しいことに質の高くない論文との出会いは当該分野の初学者にこそ起こります。使いこなすこと自体が難しい論文のデータベースと比べると大学図書館にある書籍のセレクションはずっと頼りになります(ちなみにオンライン書店の検索機能はそれ自体が研究対象でないのなら学術目的の調べ物には全く向きません)。アカデミックな調べ物があるときは何はともあれCiNii Booksを含め大学図書館の蔵書データベースを活用しましょう

お茶大図書館の場合、検索結果の詳細の下の方に類似資料が並んでいます。レポートなどのテーマ探しの段階や、具体的に参考になりそうな文献を探しているときには、この欄にも注目してみます。

複数の著者による書籍であれば、目次の詳細も見てみます。論文集の場合、同内容のものが個別の論文として発表されていることがあります。執筆者の名前などで検索すると元の論文や類似テーマの文献が公開されていることもあるので、書籍そのものがお茶大図書館になくても論文がないか探してみましょう

■ CiNii Booksを経由してGoogle Scholarを使う
お茶大図書館の蔵書を含め、CiNii Booksの検索機能と並行し、その検索結果から得られた著者名や書籍や論文のタイトル、キーワードを使って、 Google Scholarでも検索をしてみます。Google Scholarのよいところは標準的な検索結果表示が引用件数順なので、「ハズレ」の文献に最初に当たることが比較的少ない点です。なので、漠然と調べてそこからインスピレーションを得て書くタイプの人にもGoogle Scholarはおすすめです。

お茶大の学内ネットワークでGoogle Scholarを使うと検索結果から直接全文が読めるリンクが示されることもあります。また「引用元」の情報を確認すると、その文献を引用している論文や書籍に行き当たるので、重要な研究を批判的に継承した研究を探す場合にも便利です。ぜひ一度試してみてください。

通常の方法以外に、Google Scholarは条件を指定しての検索もあります。

#ジャニス #レポート・論文 #情報検索

倫理審査申請書の提出に向けて

20191007日(月)
こんにちは
月曜午後を担当している中村です。
空気が冷たくなってきて、秋を感じる今日この頃ですね

今年は博士後期に進学して1年目、前期は今後の研究計画を考えることに費やしました。。
先日、「倫理審査申請書」が承認を受け、やっと新しい調査を始めることが出来ました!
私の研究は人や団体に対して質問紙調査を行うので、
毎回、倫理審査委員会に「倫理審査申請書」を提出する必要があります。
最近はゼミの後輩から倫理審査についての相談を受けることも増えてきました。

そこで今日は文系(人文社会科学系)の倫理審査についての記事を書いてみようと思います。
あくまで文系向けですので、その前提でお読みください

人文社会科学研究の倫理審査申請書の提出について

Q1. 誰が出さなくてはいけないの?
まずは、お茶大HP上で研究倫理についてチェックしてみましょう
ざっくり解説すると、
研究倫理」とは、研究を行う上での決まり事、
倫理審査委員会」は各々の研究がきちんと研究倫理を守って行われているかを判断するところ、という感じでしょうか。
お茶大では以下の5つの倫理審査委員会が設けられています。
  組換えDNA実験
  生物医学的実験
  ヒトゲノム・遺伝子解析研究
  人文社会科学研究
  動物実験
文系で人を対象とする調査や実験を行う場合は、「人文社会科学研究の倫理審査委員会」に申請を行う必要があります。
調査や実験を始める前に「この研究は研究における決まりをきちんと守っている」と承認してもらうのです。
学会発表や論文投稿の条件としてこの承認が必須になることもあります。
ちなみに、学部生の卒論の場合は申請不要、チェックリストに沿って各自で確認ができていれば良いそうです。
(チェックリストは上記リンクページでダウンロードできます!)


Q2. なぜ申請をする必要があるの?
「研究における倫理」は非常に幅が広く、ここで全部を説明することはできないので
LALA文庫C19を参考にしてみてください!
倫理審査委員会で審査されるのは、そのうちのごく一部だけです。
何のための倫理審査かということを私なりに解釈すると、
実験・調査対象者の権利を守るため」だと考えています。
学部生向けのチェックリストを見ると、何に配慮すべきかが分かります。
  研究の計画の明確性
  実験・調査協力に対する同意を得る手続き
  対象者の負担
  プライバシーの保護
  データの保管
実験・調査対象者の権利を守ることができているのか、という視点で
上記の5点に配慮しながら申請書を埋めていけば問題ありません。
研究協力への同意が強制ではなく自由意思を尊重しているか、や
対象者にとって過度な負担を強いる内容になっていないか、という点を審査されます。
質問紙なのか、インタビューなのかでも、配慮する点が異なってきますが
下線部の「同意を得る手続き」は修正を求められることが多い部分です。


Q3. いつ出さなくてはいけないの?
人に対する調査や実験を開始する前
申請から承認までの全ての手続きが終わっていなくてはなりません。


Q4. 申請から承認までの流れは?どのくらい時間がかかるの?
基本的な流れは、以下の通りです。

提出→倫理審査委員会での審査→結果の通知→修正→再提出→再審査→承認通知
 →書類一式提出(持込)


最初の提出から結果の通知(下線部)まで、3週間〜1ヶ月強かかります。
【修正指示は必ず来る】と思っておいた方がよいでしょう。
修正して再提出した後、再審査にかかる時間がどのくらいなのかはその時々で違います。
私の経験では2、3日で結果が来た時もあれば1ヶ月かかった時もあります。
なので、最低でも2ヶ月の余裕をもって提出しましょう。
調査のギリギリ直前に出すのは禁物!

ちなみに、承認後も指導教員のサインが入った申請書と書類一式を研究協力課に提出しなくてはならないので、お休みの期間に入っちゃったりしていると結構面倒です。
それも踏まえてスケジューリングする必要がありますね。


Q5. どんな書類を出すの?
最初の申請時に必要な書類は、
  倫理審査申請書
  添付書類一式(質問紙、依頼書、研究同意書等)
そうなんです。
実際に調査・実験で使用する書類が揃っていないと申請できないんです!
調査・実験の2ヶ月前に書類を作成するのはなかなか大変なのですが、
申請してしまえばあとは実行するのみ、
労を惜しまずに頑張りましょう!!
倫理審査申請書はホームページからファイルをダウンロードし、記入例に従い作成していきましょう。
(申請書類はリンクしてあるページの最下部にあります)
審査後に修正して再提出する際は、修正結果の対応表(任意の書式)を別途作成して添付する必要があります。


Q6. 承認してもらったら終わりですか?
調査・実験が終わったら、
  研究(経過・完了)報告書
を提出しましょう。
申請通りに調査・実験が終えられたのか、報告する義務があります。
提出するタイミングは、「調査・実験を終えた後」です。
提出締切の規定はありませんが、もちろん早い方が良いです。
修士論文で倫理審査の申請が必要な方は報告書をきちんと提出してから卒業しましょうね


これだけ大変な倫理審査申請ですが、
研究を計画的に進めるための一つの指標としても使えます。
倫理審査申請書を提出しなくてはならないから、いつまでにこれを終わらせよう!
という一つの契機にしてみてください。

そして、申請書を作成する時には、
対象者の大事な時間をいただいている
という気持ちを忘れないでください。
対象者の負担をできるだけ少なくするために考えた結果、
修正の少ない申請書を作成することができます。


初めて申請書を作成する時は分からないことも多くて時間もかかります。
是非、気軽にLALAデスクに相談にいらしてくださいね

リサーチペーパーの始め方 (4):スケジュールを考える

20191004日(金)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

リサーチペーパーの始め方4回目はスケジュールについて考えます。
● リサーチペーパーの始め方 目次
第1回 下調べのまえに
第2回 資料を特定する
第3回 全体の構成を考える
第4回 スケジュールを考える

リサーチペーパーの魅力であり辛いところは執筆そのものより、リサーチのかなりの部分を「今回は」使わないということです。時間と労力を割いたのに、「今回の」ペーパーには使えないことがままあります。スケジューリングに際してはその無駄とも思える時間を勘定に入れておく必要があります。

■ 必要な作業段階をあげてみる
リサーチペーパー完成までに必要な段階をあげてみましょう。
重要なことは、どこかで必ず他の人に相談する予定を入れておくことです。

作業に取りかかった初めの数日以内にLALAデスクの予約を取っておいて、その日を目標に何番目かの段階まで進めていくというのもおすすめです。ペースメイカーにするつもりで気軽に利用してみてください。

例として作業項目をあげてみました。
この辺りで人と話すとよいのではと思われるところに◆を入れています。すべての◆で人と話さなくてはならないという意味ではありません。もちろんこの通りに作業をすすめるべきということではありませんが参考にしてみてください。

1. トピックを決める
◆ a
2. 分野の必読文献を見つけて読む
3. テーマと内容の方向性を決める
4. アウトラインを書く
5. 参考文献を探して一覧にする
◆ b
6. アウトラインを書き直す
7. 各論点について調べ、ノートを取る
8. 第一稿を書く
◆ c
9. 書き直し
10. 不足している調べものをする
11. 最終稿を書き上げる
12. 表紙含めた体裁を整える
◆ d
13. 完成

■ 他の人に意見を聞くときのコツ
一度だけ他の人に相談するのなら、トピックを決めてテーマについて考え始めたあたり(a)や、最初のアウトラインを書き参考文献の候補を見つけてきたあたり(b)で他の人の意見を聞くのがおすすめです。

第3回の最後で紹介したようなペーパーの概要(1. タイトル、2. 問題の所在(400-600字、英語なら250単語)、3. 主題文(80字、英語なら25単語)、4. アウトライン、5. 参考文献リスト)をA4サイズ2ページにまとめたうえで相談するとよいかもしれません。

この段階で大きな方向転換をしなくてはならなくなったとしても、問題はあまりありません。トピックやアプローチの変更や、全体構成を大きく変えても間に合います。アドバイスをする側にとっては負担が少なく、アドバイスをされる側にとっては短い時間でもリサーチペーパーの核に踏み込んだ有益な助言を得られる可能性が高くなります。

第一稿を書き上げたあと(c)など、何かしら原稿ができた時点で人に意見を聞くときは、フィードバックを受け取るまでに時間がかかります。場合によっては数日かかるかもしれません。何千字、何万字という長さの文章を読んだ上で全体の構成について意見を聞きたい場合も、構想時点で概要をまとめたうえで相談したように、文章からアウトラインを作り、それについての意見をもらった方が現実的かもしれません。

■ リサーチに専念できる時間を逆算する
提出締め切りまでの時間から、執筆・編集・印刷校正して完成するまでの時間を引いたものがリサーチに専念できる時間になります。

■ 執筆にかかる時間を取る
800字のまとまった文章を書くのにどのくらいかかりますか。試験だと1時間以内で書き上げた経験のある人も多いでしょう。この経験をもとに推測すると4000字は5時間あれば書き上げられそうです。(じっさいそうやって乗り切った経験がある人も多いでしょう。) 

ただ800字は一息でかける人でも4000字となると途中で休憩が必要になるかもしれません。最初の800字と最後の800字ではかかる時間は同じとは限りません。文字を打ち印刷するだけの作業にかかる時間だけでは書き上がらない可能性もあります。

アウトラインがしっかりできていて、調べ物が済んでいれば、執筆そのものにかかる時間は全体のなかでそこまで長くなりません。調べ物がほぼ終わった状態で一続きの文章を書き上げるのであれば、予定は立てやすくなります。逆に執筆作業のあいだにも調べ物をしていると、執筆にかかる時間は長くなります。

■ 編集・改稿(書き直し)にかかる時間を取る
短めの課題であれば短時間で書き上げてそのまま提出することができるかもしれません。けれども長い課題の場合は、あらかじめ書き直しをする時間を取っておいた方がよいです。そしてこの作業は意外と楽しく夢中になってしまいやすいことも覚えておきましょう。作業を始めてからは予定時間をオーバーしないように注意しましょう。この日は書き直しに割くと決めたら、その日にできる限りのことをして諦めることが必要かもしれません。

書き直しは、よく言われるように少し時間をおいて新鮮な状態で取りかかった方がよいので、一晩寝たあとに読み返し改稿する時間を取るようにします。

■ 仕上げにかかる時間を取る
逆に最終的な体裁を整え校正するのは、全く楽しくないのに意外なほど時間と労力を費やしてしまいやすい作業です。書き上げたものを音読し誤字脱字や引用箇所や注、参考文献表の確認作業を始めてみると、印刷を終えるたびに新たな訂正箇所が見つかり、きりがないということが起こります。また技術的な問題が起こりやすいのもこの段階です。

初めてきちんとしたリサーチペーパーを書く場合、最後の最後で様式や体裁の疑問が出てきたりします。なので想定の3倍くらいの時間をみておいた方がよいかもしれません。

リサーチペーパーの始め方 [第1回] [第2回] [第3回

#ジャニス #レポート・論文