リサーチペーパーの始め方 (3):全体の構成を考える

20190802日(金)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

リサーチペーパーの始め方 [第1回] [第2回]

リサーチペーパーの始め方第3回は、文章の全体像を考えます。リサーチペーパーは、アカデミックな書き手と読み手のいる一続きの文章ですから、調べたことを箇条書きにしたものとは異なります。主題文があり、それを支える根拠がロジカルに一貫性をもって示される必要があります。根拠には、事実を支える証拠と意見を支える論拠があり、こうした根拠を、ここでいうリサーチペーパーでは主に二次文献から引き出していきます。

■ 全体をシンプルに考える

文章全体の構成を単純にすると、問題の所在を論じた序論の最後に主題文があり、その後主題文を支える根拠(ときには事例や着眼点、想定反対意見への反証)が複数示され、最後にまとめとして結論がおかれます。

⭐︎序論
 ● 背景の説明:なぜこのトピックをこのように扱うのか
 ● 主題文:文章全体でイイタイコト
 ● 本論の構成
⭐︎本論
 ● 根拠1/事例1/着眼点1/想定反対意見への反証1
 ● 根拠2/事例2/着眼点2/想定反対意見への反証2
 ● 根拠3/事例3/着眼点3/想定反対意見への反証3
⭐︎結論
 ● 主題文の再提示


じっさいのリサーチペーパーはそれほど単純な構成にはならないかもしれません。ただ複雑に考えすぎて自分でも分かりづらいと感じるときは、一度コアの枠組みを取り出して組み立てをシンプルに考えてみると議論を引き締め、何が言いたいのかをはっきりさせることができます。

■ 主題文を書いてみる
主題文は、調べて考え書いていくうちに変化します。理想的には、リサーチが進めば、より明確に簡潔になっていきます。最初の段階での質について心配する必要はありません。とりあえず主題文を書いてみます。日本語なら80字で、英語なら25単語で、この文章全体を通してイイタイコトを言い切る練習と思ってやってみます。

ただ、どうしてもうまく書けない場合は、いったん諦め、全体でどういうことを書くのかを文章で書く作業や、アウトラインを書く作業に移ります。

■ 全体でどういうことを書くのかを文章で書いてみる
80字で主題文を書くのが難しい場合は、400から600字で序論の導入部分を書いてみます(英語なら250単語)。問題の所在を論じる部分になりますが、もしもピンとこなければ、次のような要素を意識してみます。(この部分は、序論の前半部分の下書きになります。)

● このトピックについて一般的に(あるいは特定の学問領域で)言われていることや分かっていること、あるいは「常識」は何か。
● このトピックを扱う際の切り口(テーマ)としてはどのようなものがあり、そのなかでも重要なのは何か。またなぜそれが重要なのか。
● この「常識」やテーマの重要性を認識したうえで、これまで間違っていたり分析が甘かったり見落とされたりしていたことは何か。
● そこから、このペーパーで調べたいことは何か。
● この疑問点を、どのように(何を対象とし、どの部分や要素に着目して)調べるのか。たとえばどの国や地域、時代、作品群や作家名、製品や成分の、何をどう調べるのか。
● 調べた結果として言えること(根拠をもって言えそうなこと)は何になるのか。

この導入部分の最後の方に、リサーチペーパー全体の主題や主張にあたる部分(主題文)が出てくるはずです。

■ アウトラインを書いてみる
仮の主題文と導入部分が書けたら、章や節、そして段落の構成を考えます。先に書いた全体の構成のなかで、本論にあたる部分、主題文を支える根拠(ときには事例や着眼点、想定反対意見への反証)の提示の仕方を考えます。

そして、最も説得力をもって主題文を支えるよう、このリサーチペーパーでカバーする論点を構成します

とくに歴史的な事件、あるいは映画や小説について分析するときに陥りやすい失敗は、その文章自体の構成が、対象とした事件の時系列や作品の展開に引きずられ、焦点がぼやけてしまうというものです。リサーチペーパーにしろ、他の文章にしろ、調査や分析の対象そのもの構造を含めた理解は重要ですが、その理解をもとに文章として書く際には、対象そのものの構成に逆らう必要もあることは覚えておいた方がよいでしょう。

リサーチペーパーとして書ける量には制限があるはずです。目安としては、たとえば序論1・本論3・結論1の割合で4000字書くとしたら、1単位(文章全体の1/5)は800字になります。序論の前半はすでに書いたので(問題の所在と主題文)、序論の後半では本論の構成を200から400字で書くことになります。この本論の構成部分を簡潔に書くと、アウトラインの骨組みになります。

この時点でのアウトラインは小見出しに近いものになります。リサーチが進み、考察が深まってくれば、このアウトラインは各段落の主意を伝えるトピックセンテンスに近いものになります。ですがこの時点では、小見出しを並べたものであったり、箇条書きに近かったり、項目の羅列であってもかまいません。

■ アウトラインに合わせて参考文献リストを書く
全体を5に分け、そのうち3を本論に割くとします。仮に論点が3つだったとしてそれぞれの論点を支える文献(根拠や事例、着眼点、本文で批判する反対意見)がそれぞれあるはずです。一つの文献が二つ以上の論点を支えている場合もあります。

アウトラインとざっくりと照らし合わせ、各論点にかかわる文献をあげてみます。文献が不足している部分があるなら、自分で調べる以外に、担当教員や図書館で相談するとよいでしょう。

◆ 主題文:〇〇は××だ。
◆ 論点1:なぜなら〇〇は××の一つである△△だからだ。
 参照する文献:文献A(根拠1と事例1)、文献B(事例2)
◆ 論点2:〇〇は□□を条件とするが、この□□という条件を支えているのが実は××でもある。
 参照する文献:文献A(着眼点)
◆ 論点3:一方〇〇は××ではないという意見があるが、それは〜〜という理由で当てはまらない。
 参照する文献:文献C(反対意見)、文献D(文献Cの意見に対する批判で自分自身が同意するもの)


もしこのように文献を使う予定であれば、文献AからDすべてを参考文献リストに入れます。

参考文献リストの作り方は、その分野によって違います。初めて作る場合や様式に不安がある場合は、こちらのサイトが参考になります

構想段階の文献リストは、それぞれの概要を知ったうえで、押さえておくべきもの、使えそうなものをあげておきます。リストにあげた文献すべてを完全に理解し読みおわっている必要はありません。丁寧に読んでみたら使えない文献というのもあります。最終稿で参照しないものがこの時点で入っていても(不要ならばあとで抜けばよいので)全くかまいません。

■ 仮のタイトルをつけてみる
「問題の所在」、「主題文」、本論の構成を示した「アウトライン」、現時点での「参考文献リスト」を書けたら、リサーチペーパーの「タイトル」をつけてみます。こたえは「問題の所在」や「主題文」のなかにあるはずです。

「タイトル」のつけかたは、これも担当教員によって期待されるものが異なります。疑問形にすべきとされたり、文字制限があったりします。よくある「〇〇についての考察」が認められない場合もあります。授業課題としてリサーチペーパーを提出する場合には、最終的につけるタイトルの要件について担当教員に確認しておきましょう。

■ 他の人の意見を聞く

ここまでの作業をまとめA4用紙2ページ以内に仕上げてみましょう。項目としては、次の5項目になります。

1. タイトル
2. 問題の所在(400-600字、英語なら250単語)
3. 主題文(80字、英語なら25単語)
4. アウトライン
5. 参考文献リスト


リサーチをさらに進め本文を書き始める前に、このアウトラインをベースに、他の人と話してみることをおすすめします。可能なら担当教員に、難しければ信頼できる勉強仲間やLALAデスクに相談してみてください。

次回はスケジュールについて考えます。

リサーチペーパーの始め方 [第1回] [第2回]

#ジャニス #レポート・論文

リサーチペーパーの始め方 (2):資料を特定する

20190801日(木)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。
(きょう8月1日は木曜日ですが臨時在席しています。)

リサーチペーパーの始め方[第1回

1回目に紹介した方法を試したけれど(もしくは試してもいないけれど)、適当なテーマが思いつかない、主題が大きすぎる/小さすぎる、トピックを指定されたが関心が持てない、というときはどうしましょう。

また一つのリサーチペーパーで、考えたことを全部使うことはできませんし、しません。調べたことを全部使うこともできません。最終的な文章が、押さえるべき情報は押さえたうえで、散漫で表層的なものにならないためには、リサーチで得られたものを取捨選択する必要があります。

リサーチペーパーの始め方の2回目は、調べものをするなかでこうした問題を解決していく作業を提案します。

■ 一次資料と二次資料
今回は二次資料を使ったリサーチペーパーを考えます。これは二次資料を使って、限りなく一次資料に近づく方法で、一般的な論文でいうところの先行研究レビューに近いものです。

何を一次資料とし、何を二次資料とするかは、何をどのように調べたいかによります。実験レポートを書くのであれば、実験データは一次資料で、データを分析した論文は二次資料です。そうした論文の言説分析をしようとするなら、それらの論文は一次資料、さらにそうした論文を分析したものが二次資料です。

■ 分野の必読文献を特定する
まずは必読文献と思われるものを探しましょう。授業のなかで、そのような文献を紹介されている場合もあるでしょう。まずはそういった書籍や論文から読んでいきます。

検索する際には、テーマだけではなく、著者名でも検索してみましょう。特定の書籍が手に入らなくても、当該書籍の著者が書いた論文や、その人が書いたものが収められた論文集、あるいは別の著作であれば、自分が利用している図書館に入っている場合があります。

大学図書館の本棚には当該分野の必読文献といわれるものが入っていることが多いです。お茶大を含めた大学図書館の蔵書を調べるときはCiNii Booksを利用します。

借りやすさでいうと地域の図書館の方が便利かもしれません。カーリルで東京都の図書館横断検索をしてみてもよいでしょう。また実店舗の書店の棚をみると新しい動向や話題になっているトピックがわかります。

学術書の後ろの参考文献の一覧に繰り返し挙がるものは(批判対象であっても)この分野を研究する以上読むべきものである可能性が高いといえます。

入門書や教科書も見てみます。今回考えているのは二次文献調査ですから、三次文献とでもいう入門書や教科書が参照している二次文献はおそらく押さえておいた方がよい文献である可能性が高くなります。さらにそのなかでも本文で言及されているものはその確率が高いといえます。

教科書的なものを見つけるためには、専門の教員に直接尋ねる以外に、大学の授業シラバスに掲載されている文献を見てみる方法があります。お茶大の授業シラバスに掲載されている指定文献はすでに付属図書館に収蔵されていることが多いです。

他大学のシラバスを探すのであれば、たとえば科学言説のなかのジェンダーについて調べたい場合なら、Googleなどの検索エンジンで「ジェンダー 科学史 テキスト 授業 シラバス site:ac.jp」と入れてみると読むべきものが見つかるかもしれません。(site:ac.jpで日本の高等教育・研究機関にほぼ限定できます)また英語文献で、たとえばトランスジェンダー研究の文献が載っていそうな米国の授業シラバスを見たいのなら「transgender studies introduction syllabus site:edu」といったキーワードを入れて調べます。

何から読めばいいのか分からない場合は、専門の教員に聞いたり、図書館で尋ねてみたりする以外に、LALAデスクも利用してみてください。

■ テーマが迷子でどうしようもないとき
資料が多すぎたり少なすぎたりして、どうしたらいいのか分からないときは、ノック式でいきます。学術データベースを一つ使って(たとえばCiNii Articles)、キーワード検索し、見つけた論文を読んでいきます。といっても全ページは読みません。また完璧主義な人ほど、読む論文の数やスケジュール的にかけられる時間を決めてから、作業に取り組むことをおすすめします。

結果として読みきれない量が出てきた場合には「被引用件数」順に並べ替えたり、時期を絞ったり、キーワードを増やしたりします。あまりにも結果が少ないときは、キーワードの数を減らしたり変えてみたり、また思っていたような文献に当たらない場合も、キーワードを変えてみます

面白そうな論文を見つけたら、もしくはちょっとでも関係がありそうな論文はまず要約を読みます。その先を読みたくなったら二段組みなら最初の2ページ、一段組みなら最初の4ページを読み、註か末尾の参考文献一覧を見ます。2ページや4ページだけではどういうものか判断がつかない場合や残りも読みたい場合は、文献情報を記録し、PDFをダウンロードし、必要なら印刷して整理していきます。

これは「雑」な読み方ですが、こういうことを調べたい、この本を読んでみたい、この論文は重要そうだ、ということがわかってきたら、そこから丁寧な読み方に切り替えます。ここでいう丁寧な読み方とは批判的な読み方のことで、方法としてはこちらの「クリティカル・リーティングを行う」解説ページ が参考になります。

次回はリサーチペーパー全体の構成を考えていきます。

リサーチペーパーの始め方[第1回


#レポート・論文 #ジャニス

リサーチペーパーの始め方 (1):下調べのまえに

20190729日(月)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

アカデミック・ライティング全般についての解説は書籍やウェブサイトが多くあります。LALA文庫にも参考図書が揃っています。

ウェブ上だと、たとえば「名古屋大学生のためのアカデミック・スキルズ」のサイトには、「レポートの構成とパラグラフ・ライティングを知る」と題された解説ページがあり、参考になります。

注意しておきたいのは、授業課題の場合、教員が期待するものにはかなりのバリエーションがあるということです。課題が出された時点では気づかず、取りかかってみたら指示が曖昧であったと判明する場合もあります。体裁や様式を含め些細なことに思えても、分からないことや聞き逃してしまったことは、提出前に(可能であれば課題に取りかかる前に)、担当教員に直接確認するようにしましょう。

とはいえ、一般的なリサーチペーパーの書き方というものもあります。今回は、二次文献を使ったリサーチペーパーの取りかかり方を紹介します。このようなリサーチペーパーを書くことは、卒業論文などの論文執筆のまえに、研究テーマについての背景を調べて考察を深めるのにも有効です。

1回目は主題の立て方を考えます。
と、そのまえに留意しておいた方がよいことをひとつ。

リサーチペーパーというからには調べものをするのですが、その調べものを始めるまえに自分が考えたことや知っていたことというのも、じつは重要になります。というのは、その特定のトピックについて生半可な知識や関心しかないとはいえこのようなリサーチペーパーを書こうという知的探究心と潜在的な理解力を備えた人物は、理想的な読者だからです。

ですから、書く内容を考えること、たとえばここから紹介する作業は、すべて図書館やインターネットでの調べものを始めるまえに(も)取り組み、記録しておくとあとで役に立つことがあります。

■ 考えていることを言葉にしていく
アカデミック・ライティングを解説する本では、考えていることを言葉にする方法として、一般にブレインストーミングやフリーライティング、マインドマップなどが紹介されています。

そのほかの方法としては、他の人と話してみるというのも効果があります。一人で考えていて進捗がないから教員に報告できない…と悩むことがあるかもしれませんが(よく分かります…)、そんなときほど相談にいくことで進捗が生まれたりします。オフィスアワーやアポイントメントを取って話にいきましょう。(LALAデスクも利用してください。)

■ 考えを整理する
ブレインストーミングからつながりや分類を考えていくための方法としてはKJ法があります。関心のある方は、中央公論社から出ている川喜田二郎『発想法』『続・発想法』を見てみてください。(お茶大図書館では文庫・新書コーナーにあり、請求番号は336/Ka94と336/Ka94/2、改版は336/Ka94cです)

KJ法ほど体系化されていなくても次のような作業をしている人は多いのではないでしょうか。
● カードや付箋を使う→並べ替えて分類やつながりを探す
● ホワイトボードや大きめの紙を使い、図解してみる
● 箇条書きで並べていく
● フリーライティング(間違いなどを気にせず、文のかたちで思うままに書く)


またアイデアをふくらませる方法としては、テーマから思いつくことを挙げていく以外に次のような切り口が考えられます。
● 具体的なことや個別事例を挙げる→共通項や違いを見つける
● 対立項目や対義語にあたるもの、似ているが異なるものを挙げる
● 原因と結果に分けて考えてみる
● 相関関係と因果関係を区別してみる
● 時間軸で考える:順番や段階なのか、同時なのか、オーバーラップしているのか…
● 空間軸で考える:序列はあるのか、水平あるいは垂直なのか、相互排他的なのか…


ブレインストーミングやフリーライティングなどの考えを言葉にして整理していく作業は最初だけではなく、繰り返し立ち戻ってやってみるのがおすすめです。

■ 主題を問いから考える
もしかしたらトピックやテーマはすでに与えられているかもしれません。あるいはすでに頭のなかにあるかもしれません。このときにどこからどう考えればいいのかわからない場合は、(無理やりにでも)質問のかたちにしてみるというのも一つの方法です。質問は一つとは限りません。思いつくものをあげてみましょう。たとえば…

「男性性」をテーマに考える場合:
● 男性性研究はいつから始まり、どの分野の研究者がどのような問いを立ててきたのか。
● 日本の男性性研究の限界や主流の男性性研究に対する批判にはどのようなものがあるか。
● 〇〇という研究者は、男性性をシスジェンダーの男性に帰属する性質とするが、それはなぜか。
● 〇〇であることは男性的とされるが、それが特定の民族や階級の特徴ではなく、ジェンダーによる差異であるといえるのはなぜか。
● 現代日本社会における男性性にかんする問題にはどのようなものがあり、そのうち何が最も重要なのか。またそれはなぜか。
● 『〇〇〇〇』という漫画とそれを原作とした実写映画にみられる男性キャラクター表象にはずれがあるが、そのいずれもが男性とされるのはなぜか。


「性暴力」をテーマに考える場合:
● 性暴力とはどのような暴力のことをいい、どのような分類が可能なのか。
● 性暴力にまつわる言葉遣いに時代や文脈、含意に差異があるとすればなにか。
● 日本における性暴力事件をめぐる過去の判例において、どの法律が根拠とされてきたのか。またその法律の規定における××の面での限界はなにか。
● 性暴力は人権を侵害しているというとき、そこにはどのような原則が前提されたうえでそれが侵害されているといわれているのか。
● 性暴力にまつわる近年の××運動は過去の〇〇運動とは、その背景や関わった人々、その運動がもつ影響について、どのような共通点や相違点があるのか。
● 〇〇年代の〇〇賞受賞小説作品において性暴力の深刻さはどのようには語られたのか、あるいは語られなかったのか。
● 〇〇という出来事は「性暴力」とはされないが、それはなぜか。


問いを立てるときは、Whatや Whoの問い「〇〇とはなにか」「〇〇と××の関係や構造はなにか」「〇〇に当てはまるのはどれか」というかたちでは書くべきことがみえてこない場合は、Why(根拠や原因)やHow(方法や手続き)の問い「なぜ〇〇は××なのか」「どのように〇〇は××になったのか」と考えてみます。
またこうした問いの記述そのものを問う「なぜ〇〇は××といえるのか」「どのように〇〇といえるのか」を考えると具体的に書くための問いにつなげやすくなります。

■ なぜそれについて書くのかを考える

すぐに質問のかたちにするのが難しい場合は、自分自身が、なぜ(いまここで)そのことについて書くのかを考えてみましょう。たとえば次のような問いへの自分なりの答えを考えてみます。

● どのような社会的・学問的要請を背景として〇〇を論じる意義があるといえるのか。
● 〇〇は××であるとは常識として受け入れられているのに、なぜ〇〇が××なのか、という問いを立てることが可能なのはなぜか。
● いかにして私は/〇〇という研究者は、このテーマに関心をもつにいたったのか。
● なぜこの研究対象を選び、かつ〇〇の側面に着目するのか。
● 〇〇という問題はすでに解決しているとされているのに、ここで論じるのはなぜか。
● 〇〇という事象については様々な問題があるのに、××がとくに重要なのはなぜか。
● 〇〇という課題については一般には××が取り上げられるが、ここで△△に注目するのはなぜか。


ここまで考えたら、リサーチを始めます。

リサーチペーパーの始め方[第2回


#ジャニス #レポート・論文

文献管理プログラム (Citation Managers) を使ってみましょう

20190617日(月)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

今回は文献管理プログラムについてご紹介します。

レポートや論文を書くときは、直接引用した文献や、議論の根拠とした情報源がどこにあるのかを読者に分かるように書きます。今回ご紹介するのは、そうした情報を整理する助けとなるプログラムです。

■ 全体的な仕組み
文献管理プログラムは、自分だけにカスタマイズした文献情報のデータベースの1) 作成と 2) アクセスと 3) 利用を容易にしてくれるものです。

文献情報というのは一般書籍でいうと、タイトル、著者名、発行年、言語、出版社、発行された国・都市名、といったものです。こうした情報が数件程度であればいいのですが、大学生活を送っていくうちに、おそらくそれらは膨大な数になります。数が増えるだけならいいのですが、文献情報というのは本の形ではなく、論文はもちろんウェブサイトや公文書、映画や楽譜…と様々なかたちを取ることになる場合もあります。そうなってくると管理はいっそう難しくなります。

そこで個々人がFileMakerやMicrosoft Accessなどを使ってデータベースを構築してもいいのですが、執筆を前提とした文献などの情報管理に特化した多数のプログラムが全世界のモノを書く人たちのためにすでに用意されているのです。このように便利なものを使ってみない手はありません。

いずれのプログラムを使う場合でも、各管理組織はデータベースをインターネットからアクセス可能にしており、各ユーザが専用アカウントを使って、複数の端末から同一の(その都度最新の状態に更新された)データベースにアクセスできるように設定できるようになっています。つまり基本的な仕組みは小林さんが先日紹介されていたクラウドメモと同じです。

外出先のコンピュータを使うときはブラウザを使ってウェブサイトからアクセスし、個人所有のラップトップにはデスクトップ上にアプリケーションを常在させ、スマホ用のアプリが用意されていればそれを使う、ということができます。

■ 文献管理プログラムできること
文献管理プログラムと一口にいっても、無料・有料ともに膨大な種類があります。英語のウィキペディアでは様々なソフトの違いが比較されています。https://en.wikipedia.org/wiki/Comparison_of_reference_management_software

2019年6月現在、お茶大図書館ウェブサイトで紹介されているものは、RefWorks、 Mendeley、 EndNote です。
※RefWorksについて、お茶大では2019年9月で契約を中止することになっています。

わたし自身はずっとRefWorksを使ってきました。それに加えて、オフラインでも情報が管理できるものに切り替えよう思いZoteroというプログラムを使い始めたところです。

迷うほどの種類があるのですが、幸い(!)どのプログラムを選んでも、以下のことができます。
 ● 文献データベース (PubMedなどの論文データベースはもちろんOPACなど)から文献情報を入力すること
 ● 個々の文献情報をフォルダーやグループ別に分類・整理すること
 ● 文献情報に紐づけてPDFファイルを加えること
 ● Microsoft Word や同様の文書作成プログラムで様式 (styles) に合わせた文献一覧表を作成すること
 ● 自分自身のデータベースのすべて、もしくはその一部を、適切なアクセス制限を設けたうえで他のユーザと共有すること

そして何らかの事情でデータベースを移動させたり、使用するプログラムを変更したりする場合でも、たいていのプログラムは基本的な文献情報にかんして出し入れすることはそれほど難しくない作りになっています。なので気軽に使い始めてみましょう。

■ いつから使うの? −−リサーチを始めたらすぐに使い始めるのです!

論文を書く前には、調べ物をして記録を取りますよね。その時点から使い始めます。

このエントリーでは「男性性」についてレポートを書くことになった場合を考えていきます。まずは先生に勧められた『介護する息子たち』という本を探してみることにします。いま見たところ、お茶大図書館には電子版が、文京区の図書館には印刷版があるようです。

全国の大学図書館の蔵書を探せるCiNii Booksで検索すると2019年6月17日現在222館に所蔵されています。
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB23155914
こちらのページをみると、右下に「書き出し」というかたまりがあります。
  RefWorksに書き出し
  EndNoteに書き出し
  Mendeleyに書き出し
  Refer/BibIXで表示
  RISで表示
  BibTeXで表示
  TSVで表示
  ISBDで表示


読み込むプログラムに合わせて、これらのいずれかを使います。
RefWorksやEndNote、 Mendeleyは該当のボタンをクリックすればいいので、かんたんですね。ZoteroならRIS形式が読み込めるので、それをデスクトップ・アプリに取り込むことができます(もしくはウェブクリップ機能を使って取り込みます)。

この作業を開始する(該当ボタンをクリックする)前に、RefWorksならウェブサイトからログインしたり、Zoteroならデスクトップ・アプリを立ち上げておいたりすると、スムーズに作業ができるはずです。

どの文献管理プログラムでも、書籍や論文以外のリソースについて情報を入力することができます。このとき最終的な出力形式で必要な情報を不足なく入れておくことが大事です。また文献情報と合わせて個人ノートを書いておくこともできます。

EvernoteやDropboxをすでに利用しているのであれば、そうしたデータベースの情報と連携させておくこともできます(たとえばEvernoteのノートから共有リンクを生成して、それを文献管理プログラムの該当資料エントリーのフィールドにコピペしておくなど)。

文献情報は自動で入力する以外にも、手動で一つずつ入力することもできます。

■ あとで探しやすいように分類する
文献情報を取り込むのは大変簡単なので、文献管理プログラムのデータベースはなんでも入れがちになりますが、最初の入力時点で、フォルダ分けやタグ付けで、分類のところまでやっておくと、あとの作業が楽になります。

フォルダやタグは執筆課題ごとで分けておくのがおすすめです(出力時の手間を省くため)。具体的な課題が定まる前段階なら、テーマごとでも問題ありません。

いざとなれば全部検索できるとはいえ、未来の自分のために、分類しておく手間を最初は惜しまないのがコツです。

文献管理プログラムの各エントリーにはアブストラクトやノートのフィールドがあるので、資料の要約やキーワードを入れておくのも便利です。

■ 文献情報を出力する
必要な文献情報がすべて文献管理プログラムに入力できたら、それを出力することができます。

各プログラムにはMS Wordへの追加機能(アドオン)が用意されていますので、それを利用して引用参照していくことはもちろん、書き上げた論文の最後につける文献リストを作ることができます。ただし慣れないうちはとくに、要求されたスタイルに合わせた文献リストを作成する作業を提出締め切りギリギリにしてはいけません(経験者)。

ということで、最初の一件を入力したら、そのエントリーを選んで、出力の機能を一度試してみましょう。また、文献購読や勉強会などで報告担当者になったときに、レジュメの冒頭におく文献の基礎情報を、表記の確認を兼ね、文献管理プログラムからスタイルを指定して出力してみるのもおすすめです。

■ 使い方がわからないときは…
共通機能があるとはいえ、それぞれの文献管理プログラムには得意・不得意があります。各プログラムの運営組織や大学図書館、ユーザによって、便利な機能が紹介されています。

とくに初めて使うときには、画面の遷移をそのまま写している動画での解説が分かりやすいです。たとえばこういう動画があります(音がなくても理解できます・まどろっこしい部分や不必要な部分は飛ばしても大丈夫です)。
  ● Mendeley文献情報を集める編 オンライン講習会
    https://www.youtube.com/watch?v=Qx8vzA0LdJc
  ● RefWorks(Legacy Version)の使い方 - 基本から実践まで
    https://www.youtube.com/watch?v=htEVdDVw6_k
  ● Learn Zotero: Step by step tutorial
    https://www.youtube.com/watch?v=HwCL3qozuB4
  ● EndNoteの基本的な使い方
    https://www.youtube.com/watch?v=j9ybysg7nZU

文献管理プログラムを使うと、他の人と文献情報を共有することも容易にできます。グループ課題や共同研究に取り組むとき、同じ資料を参照したり、自分が見つけた資料を仲間に紹介したりするときに、文献情報ごと共有することができます。また同じプログラムを利用している仲間と情報交換できると心強いものです。周囲でこうしたプログラムを使っている人がいないか(身近にいなければLALAデスクで聞いてみてください)、使ったことのある人がいれば感想も合わせて、聞いてみましょう。

#ジャニス #文献管理

課題レポート執筆時、参考になるウェブサイト

20190610日(月)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

レポートの書き方全般については時間があるときにぜひLALA文庫などから、ご自身のニーズに合った書籍を選んで読んでみることをおすすめします。

時間がなく本を読めと言われてもどれを読めばいいか分からないときはどうしましょう? ウェブ上の情報を参考にするとなると、どのサイトの情報が信用でき、ご自身のニーズに合っているのかを判断する必要があります。Googleなどの検索エンジンで、調べたいキーワードに加えて、site:ac.jp と入れてウェブサイトのドメインを限定すると、日本の教育・学術機関にほぼ絞って調べることができます。

今回はわたし自身が参照しているサイトをいくつかご紹介します。時間がないときだけでなく、余裕があるときにも(!)おすすめできるサイトばかりです。

■ 論文の書き方(台湾 育達商業科技大學応用日本語学科 内山和也先生のサイトから)
http://web.ydu.edu.tw/~uchiyama/ron/index.html
日本語の学術的な文章を書くうえで、たとえば標準的なレポートの体裁など、書籍ではあまり丁寧に解説されていない「常識」を含めて確認することができます。

■ レポート課題に備える
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/asg/prepareessay.html
名古屋大学生のためのアカデミック・スキルズ・ガイド(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/asg/)のなかの1ページで、レポートの課題が出たときに、具体的に何をするべきなのかを解説してくれています。このガイドは各ページと冒頭に参考文献情報もあります。ここから使えそうな本を見つけて実際に手にとって読んでみるのもいいかもしれません。

■ 社会学評論スタイルガイド
https://jss-sociology.org/bulletin/guide/
日本社会学会(https://jss-sociology.org/)が公開しているスタイルガイドです。句読点の打ち方から文献リストの作り方まで、分野ごと・ジャーナルごとに論文のスタイルは異なるものですが、社会科学系の課題レポートで担当教員から指示がなければ、このスタイルに沿って書くことができます。
一続きの文章で使用されるスタイルは一種類。全体を通して一貫性が必要です。一編のレポートで特定のスタイルを使うことに決めたら、他の論文誌のスタイルを混ぜて使ってはいけません。

■ Purdue Online Writing Lab
https://owl.purdue.edu/owl/purdue_owl.html
米国インディアナ州のパーデュー大学が運営・公開しているライティング・ラボのサイトです。英語のライティングで迷ったらたいていの情報はここにあります。とくに表紙の作り方や引用の方法、APAやChicago、MLAといった異なるスタイルごとの解説が丁寧です。完成版のサンプル・ペーパーが出ているので、どういう見た目になるのかが分かりやすいです。