テーマやトピックは決まっているけど、どうしたらいいのか分からないとき

20200109日(木)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。
(本日2020年1月9日木曜日11-13時は臨時で在席しています。)

今回はレポートや論文で書くべきテーマやトピックは決まっているけれど、そこからどうしたいいのか分からないときにヒントを見つけられそうな方法をご紹介します。もちろんLALAデスクにも相談にきてくださいね〜。

■ 何から始めればいいか分からない(授業課題からヒントを拾う)
授業で扱ったことのあるトピックならば、授業ノートや課題文献、参考文献としてあげられたものを読み返してみましょう。文献についていえば注釈まで丁寧に読みます。そのなかで、講義を聞いて板書を写したときや、前に読んだときには気づかなかった、論理的な飛躍や説明不足に感じるところはないでしょうか。

授業でやったことを踏まえたうえで何か別のことについて調べて書く課題の場合も、手元にある資料にヒントが埋もれていることはよくあります。学んだあとに読み返すと疑問が湧いてくることも、知識を得て思考が深まったあとに最初からぼんやりと抱いていた違和感が増大することもあります。そういった疑問のかけらを恐れずつかまえるつもりで復習してみましょう。

こうした復習作業は必ずしも一人でやる必要はありません。他の受講生と複数で一緒にやるのもありですよ。

■ 何から読めば分からない(手がかりが多すぎる)
あれもこれもやらなければならない、読まなければならないけれど、どれからやればいいのか分からない。やるべきことは分かっているつもりなのに、優先順位が分からなくて何も始められないときはどうしましょう。

入門書に立ち戻るのも一つの方法です。ここでいう入門書というのは、研究者が自身の専門分野について一般の人向けに分かりやすく書いたもののことです。新書や選書の形態であることも多いので、お茶大図書館の文庫本・新書の棚に行って探索するのもおすすめです。(インターネットには新書マップという楽しいサイトがあるのですが、新書という出版形態が一定の質を保証するものではないことには注意が必要です。)新書で飽き足らない場合は放送大学のテキストの棚も見てみましょう。そしてできれば同じテーマやトピックを扱っている本を複数冊読んでみます。

いくつか集めたら複数の入門書を発表された順に並べ、古いものから新しいものにかけて、繰り返し参照される理論家や研究者による書籍や論文を見つけて、次の調べ物につなげます。

じつはテーマやトピックを決めるときには、課題を仕上げるまでの時間と書き上げる文章の長さで自動的に決まるところがあります。なので、このやり方だと少し大きめのテーマにたどりつくことになります。そういうときは次のやり方はどうでしょう。

■ 1件目の文献を「ちゃんと読む」
もしも課題に取り組むにあたって文献が指定されている場合、あるいはそのテーマやトピックについて書くなら必読とされる書籍や論文が判明している場合、それを読みます。一人の著者による複数の文献が必読なら、発表年の早いものから読んでいくと理解しやすい可能性が高いです。読みきれないほどの数があるのなら、よく引用される短めのものをまずは選んでみます。

文献を「ちゃんと読む」感覚がつかめないときは、読んで書くところまで時間と字数の制限を決めて要旨を書いてみます(たとえば6時間以内で読み終えて1600字以内で要旨を書きあげるところまでやる)。要旨を書きあげたら、じつは知識がなかったり難解すぎて簡潔にまとめられず入れ込むのを諦めたり誤魔化したりした自覚のある部分はないでしょうか。そこから 文章を書く具体的なアプローチにつなげることもできます。「ちゃんと読む」作業をしたあと、あるいは要旨を書いたあとに、ブレインストーミングやフリーライティングといったアイデア出しの手法を試してみるのもいいかもしれません。

ちゃんと読む」ときは巻末註や参考文献リストまで確認することを自分に課します。「確認」というのは少しでも疑問に思うことがあれば元の情報源にあたる、ということです。確認してみたものの、腑に落ちない、もう少し調べたい、きちんと整理して考えたいと思ったところがあれば、そのタネを育ててみます。

■ お茶大図書館の蔵書検索結果を使いこなす
じつをいうとどんな学術データベースを使ったとしても、経験の浅いうちは質の良い優れた論文を探し出すことは容易ではありません。悲しいことに質の高くない論文との出会いは当該分野の初学者にこそ起こります。使いこなすこと自体が難しい論文のデータベースと比べると大学図書館にある書籍のセレクションはずっと頼りになります(ちなみにオンライン書店の検索機能はそれ自体が研究対象でないのなら学術目的の調べ物には全く向きません)。アカデミックな調べ物があるときは何はともあれCiNii Booksを含め大学図書館の蔵書データベースを活用しましょう

お茶大図書館の場合、検索結果の詳細の下の方に類似資料が並んでいます。レポートなどのテーマ探しの段階や、具体的に参考になりそうな文献を探しているときには、この欄にも注目してみます。

複数の著者による書籍であれば、目次の詳細も見てみます。論文集の場合、同内容のものが個別の論文として発表されていることがあります。執筆者の名前などで検索すると元の論文や類似テーマの文献が公開されていることもあるので、書籍そのものがお茶大図書館になくても論文がないか探してみましょう

■ CiNii Booksを経由してGoogle Scholarを使う
お茶大図書館の蔵書を含め、CiNii Booksの検索機能と並行し、その検索結果から得られた著者名や書籍や論文のタイトル、キーワードを使って、 Google Scholarでも検索をしてみます。Google Scholarのよいところは標準的な検索結果表示が引用件数順なので、「ハズレ」の文献に最初に当たることが比較的少ない点です。なので、漠然と調べてそこからインスピレーションを得て書くタイプの人にもGoogle Scholarはおすすめです。

お茶大の学内ネットワークでGoogle Scholarを使うと検索結果から直接全文が読めるリンクが示されることもあります。また「引用元」の情報を確認すると、その文献を引用している論文や書籍に行き当たるので、重要な研究を批判的に継承した研究を探す場合にも便利です。ぜひ一度試してみてください。

通常の方法以外に、Google Scholarは条件を指定しての検索もあります。

#ジャニス #レポート・論文 #情報検索

倫理審査申請書の提出に向けて

20191007日(月)
こんにちは
月曜午後を担当している中村です。
空気が冷たくなってきて、秋を感じる今日この頃ですね

今年は博士後期に進学して1年目、前期は今後の研究計画を考えることに費やしました。。
先日、「倫理審査申請書」が承認を受け、やっと新しい調査を始めることが出来ました!
私の研究は人や団体に対して質問紙調査を行うので、
毎回、倫理審査委員会に「倫理審査申請書」を提出する必要があります。
最近はゼミの後輩から倫理審査についての相談を受けることも増えてきました。

そこで今日は文系(人文社会科学系)の倫理審査についての記事を書いてみようと思います。
あくまで文系向けですので、その前提でお読みください

人文社会科学研究の倫理審査申請書の提出について

Q1. 誰が出さなくてはいけないの?
まずは、お茶大HP上で研究倫理についてチェックしてみましょう
ざっくり解説すると、
研究倫理」とは、研究を行う上での決まり事、
倫理審査委員会」は各々の研究がきちんと研究倫理を守って行われているかを判断するところ、という感じでしょうか。
お茶大では以下の5つの倫理審査委員会が設けられています。
  組換えDNA実験
  生物医学的実験
  ヒトゲノム・遺伝子解析研究
  人文社会科学研究
  動物実験
文系で人を対象とする調査や実験を行う場合は、「人文社会科学研究の倫理審査委員会」に申請を行う必要があります。
調査や実験を始める前に「この研究は研究における決まりをきちんと守っている」と承認してもらうのです。
学会発表や論文投稿の条件としてこの承認が必須になることもあります。
ちなみに、学部生の卒論の場合は申請不要、チェックリストに沿って各自で確認ができていれば良いそうです。
(チェックリストは上記リンクページでダウンロードできます!)


Q2. なぜ申請をする必要があるの?
「研究における倫理」は非常に幅が広く、ここで全部を説明することはできないので
LALA文庫C19を参考にしてみてください!
倫理審査委員会で審査されるのは、そのうちのごく一部だけです。
何のための倫理審査かということを私なりに解釈すると、
実験・調査対象者の権利を守るため」だと考えています。
学部生向けのチェックリストを見ると、何に配慮すべきかが分かります。
  研究の計画の明確性
  実験・調査協力に対する同意を得る手続き
  対象者の負担
  プライバシーの保護
  データの保管
実験・調査対象者の権利を守ることができているのか、という視点で
上記の5点に配慮しながら申請書を埋めていけば問題ありません。
研究協力への同意が強制ではなく自由意思を尊重しているか、や
対象者にとって過度な負担を強いる内容になっていないか、という点を審査されます。
質問紙なのか、インタビューなのかでも、配慮する点が異なってきますが
下線部の「同意を得る手続き」は修正を求められることが多い部分です。


Q3. いつ出さなくてはいけないの?
人に対する調査や実験を開始する前
申請から承認までの全ての手続きが終わっていなくてはなりません。


Q4. 申請から承認までの流れは?どのくらい時間がかかるの?
基本的な流れは、以下の通りです。

提出→倫理審査委員会での審査→結果の通知→修正→再提出→再審査→承認通知
 →書類一式提出(持込)


最初の提出から結果の通知(下線部)まで、3週間〜1ヶ月強かかります。
【修正指示は必ず来る】と思っておいた方がよいでしょう。
修正して再提出した後、再審査にかかる時間がどのくらいなのかはその時々で違います。
私の経験では2、3日で結果が来た時もあれば1ヶ月かかった時もあります。
なので、最低でも2ヶ月の余裕をもって提出しましょう。
調査のギリギリ直前に出すのは禁物!

ちなみに、承認後も指導教員のサインが入った申請書と書類一式を研究協力課に提出しなくてはならないので、お休みの期間に入っちゃったりしていると結構面倒です。
それも踏まえてスケジューリングする必要がありますね。


Q5. どんな書類を出すの?
最初の申請時に必要な書類は、
  倫理審査申請書
  添付書類一式(質問紙、依頼書、研究同意書等)
そうなんです。
実際に調査・実験で使用する書類が揃っていないと申請できないんです!
調査・実験の2ヶ月前に書類を作成するのはなかなか大変なのですが、
申請してしまえばあとは実行するのみ、
労を惜しまずに頑張りましょう!!
倫理審査申請書はホームページからファイルをダウンロードし、記入例に従い作成していきましょう。
(申請書類はリンクしてあるページの最下部にあります)
審査後に修正して再提出する際は、修正結果の対応表(任意の書式)を別途作成して添付する必要があります。


Q6. 承認してもらったら終わりですか?
調査・実験が終わったら、
  研究(経過・完了)報告書
を提出しましょう。
申請通りに調査・実験が終えられたのか、報告する義務があります。
提出するタイミングは、「調査・実験を終えた後」です。
提出締切の規定はありませんが、もちろん早い方が良いです。
修士論文で倫理審査の申請が必要な方は報告書をきちんと提出してから卒業しましょうね


これだけ大変な倫理審査申請ですが、
研究を計画的に進めるための一つの指標としても使えます。
倫理審査申請書を提出しなくてはならないから、いつまでにこれを終わらせよう!
という一つの契機にしてみてください。

そして、申請書を作成する時には、
対象者の大事な時間をいただいている
という気持ちを忘れないでください。
対象者の負担をできるだけ少なくするために考えた結果、
修正の少ない申請書を作成することができます。


初めて申請書を作成する時は分からないことも多くて時間もかかります。
是非、気軽にLALAデスクに相談にいらしてくださいね

リサーチペーパーの始め方 (4):スケジュールを考える

20191004日(金)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

リサーチペーパーの始め方4回目はスケジュールについて考えます。
● リサーチペーパーの始め方 目次
第1回 下調べのまえに
第2回 資料を特定する
第3回 全体の構成を考える
第4回 スケジュールを考える

リサーチペーパーの魅力であり辛いところは執筆そのものより、リサーチのかなりの部分を「今回は」使わないということです。時間と労力を割いたのに、「今回の」ペーパーには使えないことがままあります。スケジューリングに際してはその無駄とも思える時間を勘定に入れておく必要があります。

■ 必要な作業段階をあげてみる
リサーチペーパー完成までに必要な段階をあげてみましょう。
重要なことは、どこかで必ず他の人に相談する予定を入れておくことです。

作業に取りかかった初めの数日以内にLALAデスクの予約を取っておいて、その日を目標に何番目かの段階まで進めていくというのもおすすめです。ペースメイカーにするつもりで気軽に利用してみてください。

例として作業項目をあげてみました。
この辺りで人と話すとよいのではと思われるところに◆を入れています。すべての◆で人と話さなくてはならないという意味ではありません。もちろんこの通りに作業をすすめるべきということではありませんが参考にしてみてください。

1. トピックを決める
◆ a
2. 分野の必読文献を見つけて読む
3. テーマと内容の方向性を決める
4. アウトラインを書く
5. 参考文献を探して一覧にする
◆ b
6. アウトラインを書き直す
7. 各論点について調べ、ノートを取る
8. 第一稿を書く
◆ c
9. 書き直し
10. 不足している調べものをする
11. 最終稿を書き上げる
12. 表紙含めた体裁を整える
◆ d
13. 完成

■ 他の人に意見を聞くときのコツ
一度だけ他の人に相談するのなら、トピックを決めてテーマについて考え始めたあたり(a)や、最初のアウトラインを書き参考文献の候補を見つけてきたあたり(b)で他の人の意見を聞くのがおすすめです。

第3回の最後で紹介したようなペーパーの概要(1. タイトル、2. 問題の所在(400-600字、英語なら250単語)、3. 主題文(80字、英語なら25単語)、4. アウトライン、5. 参考文献リスト)をA4サイズ2ページにまとめたうえで相談するとよいかもしれません。

この段階で大きな方向転換をしなくてはならなくなったとしても、問題はあまりありません。トピックやアプローチの変更や、全体構成を大きく変えても間に合います。アドバイスをする側にとっては負担が少なく、アドバイスをされる側にとっては短い時間でもリサーチペーパーの核に踏み込んだ有益な助言を得られる可能性が高くなります。

第一稿を書き上げたあと(c)など、何かしら原稿ができた時点で人に意見を聞くときは、フィードバックを受け取るまでに時間がかかります。場合によっては数日かかるかもしれません。何千字、何万字という長さの文章を読んだ上で全体の構成について意見を聞きたい場合も、構想時点で概要をまとめたうえで相談したように、文章からアウトラインを作り、それについての意見をもらった方が現実的かもしれません。

■ リサーチに専念できる時間を逆算する
提出締め切りまでの時間から、執筆・編集・印刷校正して完成するまでの時間を引いたものがリサーチに専念できる時間になります。

■ 執筆にかかる時間を取る
800字のまとまった文章を書くのにどのくらいかかりますか。試験だと1時間以内で書き上げた経験のある人も多いでしょう。この経験をもとに推測すると4000字は5時間あれば書き上げられそうです。(じっさいそうやって乗り切った経験がある人も多いでしょう。) 

ただ800字は一息でかける人でも4000字となると途中で休憩が必要になるかもしれません。最初の800字と最後の800字ではかかる時間は同じとは限りません。文字を打ち印刷するだけの作業にかかる時間だけでは書き上がらない可能性もあります。

アウトラインがしっかりできていて、調べ物が済んでいれば、執筆そのものにかかる時間は全体のなかでそこまで長くなりません。調べ物がほぼ終わった状態で一続きの文章を書き上げるのであれば、予定は立てやすくなります。逆に執筆作業のあいだにも調べ物をしていると、執筆にかかる時間は長くなります。

■ 編集・改稿(書き直し)にかかる時間を取る
短めの課題であれば短時間で書き上げてそのまま提出することができるかもしれません。けれども長い課題の場合は、あらかじめ書き直しをする時間を取っておいた方がよいです。そしてこの作業は意外と楽しく夢中になってしまいやすいことも覚えておきましょう。作業を始めてからは予定時間をオーバーしないように注意しましょう。この日は書き直しに割くと決めたら、その日にできる限りのことをして諦めることが必要かもしれません。

書き直しは、よく言われるように少し時間をおいて新鮮な状態で取りかかった方がよいので、一晩寝たあとに読み返し改稿する時間を取るようにします。

■ 仕上げにかかる時間を取る
逆に最終的な体裁を整え校正するのは、全く楽しくないのに意外なほど時間と労力を費やしてしまいやすい作業です。書き上げたものを音読し誤字脱字や引用箇所や注、参考文献表の確認作業を始めてみると、印刷を終えるたびに新たな訂正箇所が見つかり、きりがないということが起こります。また技術的な問題が起こりやすいのもこの段階です。

初めてきちんとしたリサーチペーパーを書く場合、最後の最後で様式や体裁の疑問が出てきたりします。なので想定の3倍くらいの時間をみておいた方がよいかもしれません。

リサーチペーパーの始め方 [第1回] [第2回] [第3回

#ジャニス #レポート・論文

リサーチペーパーの始め方 (3):全体の構成を考える

20190802日(金)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

● リサーチペーパーの始め方 目次
第1回 下調べのまえに
第2回 資料を特定する
第3回 全体の構成を考える
第4回 スケジュールを考える


リサーチペーパーの始め方第3回は、文章の全体像を考えます。
リサーチペーパーは、アカデミックな書き手と読み手のいる一続きの文章ですから、調べたことを箇条書きにしたものとは異なります。主題文があり、それを支える根拠がロジカルに一貫性をもって示される必要があります。根拠には、事実を支える証拠と意見を支える論拠があり、こうした根拠を、ここでいうリサーチペーパーでは主に二次文献から引き出していきます。

■ 全体をシンプルに考える

文章全体の構成を単純にすると、問題の所在を論じた序論の最後に主題文があり、その後主題文を支える根拠(ときには事例や着眼点、想定反対意見への反証)が複数示され、最後にまとめとして結論がおかれます。

⭐︎序論
 ● 背景の説明:なぜこのトピックをこのように扱うのか
 ● 主題文:文章全体でイイタイコト
 ● 本論の構成
⭐︎本論
 ● 根拠1/事例1/着眼点1/想定反対意見への反証1
 ● 根拠2/事例2/着眼点2/想定反対意見への反証2
 ● 根拠3/事例3/着眼点3/想定反対意見への反証3
⭐︎結論
 ● 主題文の再提示


じっさいのリサーチペーパーはそれほど単純な構成にはならないかもしれません。ただ複雑に考えすぎて自分でも分かりづらいと感じるときは、一度コアの枠組みを取り出して組み立てをシンプルに考えてみると議論を引き締め、何が言いたいのかをはっきりさせることができます。

■ 主題文を書いてみる
主題文は、調べて考え書いていくうちに変化します。理想的には、リサーチが進めば、より明確に簡潔になっていきます。最初の段階での質について心配する必要はありません。とりあえず主題文を書いてみます。日本語なら80字で、英語なら25単語で、この文章全体を通してイイタイコトを言い切る練習と思ってやってみます。

ただ、どうしてもうまく書けない場合は、いったん諦め、全体でどういうことを書くのかを文章で書く作業や、アウトラインを書く作業に移ります。

■ 全体でどういうことを書くのかを文章で書いてみる
80字で主題文を書くのが難しい場合は、400から600字で序論の導入部分を書いてみます(英語なら250単語)。問題の所在を論じる部分になりますが、もしもピンとこなければ、次のような要素を意識してみます。(この部分は、序論の前半部分の下書きになります。)

● このトピックについて一般的に(あるいは特定の学問領域で)言われていることや分かっていること、あるいは「常識」は何か。
● このトピックを扱う際の切り口(テーマ)としてはどのようなものがあり、そのなかでも重要なのは何か。またなぜそれが重要なのか。
● この「常識」やテーマの重要性を認識したうえで、これまで間違っていたり分析が甘かったり見落とされたりしていたことは何か。
● そこから、このペーパーで調べたいことは何か。
● この疑問点を、どのように(何を対象とし、どの部分や要素に着目して)調べるのか。たとえばどの国や地域、時代、作品群や作家名、製品や成分の、何をどう調べるのか。
● 調べた結果として言えること(根拠をもって言えそうなこと)は何になるのか。

この導入部分の最後の方に、リサーチペーパー全体の主題や主張にあたる部分(主題文)が出てくるはずです。

■ アウトラインを書いてみる
仮の主題文と導入部分が書けたら、章や節、そして段落の構成を考えます。先に書いた全体の構成のなかで、本論にあたる部分、主題文を支える根拠(ときには事例や着眼点、想定反対意見への反証)の提示の仕方を考えます。

そして、最も説得力をもって主題文を支えるよう、このリサーチペーパーでカバーする論点を構成します

とくに歴史的な事件、あるいは映画や小説について分析するときに陥りやすい失敗は、その文章自体の構成が、対象とした事件の時系列や作品の展開に引きずられ、焦点がぼやけてしまうというものです。リサーチペーパーにしろ、他の文章にしろ、調査や分析の対象そのもの構造を含めた理解は重要ですが、その理解をもとに文章として書く際には、対象そのものの構成に逆らう必要もあることは覚えておいた方がよいでしょう。

リサーチペーパーとして書ける量には制限があるはずです。目安としては、たとえば序論1・本論3・結論1の割合で4000字書くとしたら、1単位(文章全体の1/5)は800字になります。序論の前半はすでに書いたので(問題の所在と主題文)、序論の後半では本論の構成を200から400字で書くことになります。この本論の構成部分を簡潔に書くと、アウトラインの骨組みになります。

この時点でのアウトラインは小見出しに近いものになります。リサーチが進み、考察が深まってくれば、このアウトラインは各段落の主意を伝えるトピックセンテンスに近いものになります。ですがこの時点では、小見出しを並べたものであったり、箇条書きに近かったり、項目の羅列であってもかまいません。

■ アウトラインに合わせて参考文献リストを書く
全体を5に分け、そのうち3を本論に割くとします。仮に論点が3つだったとしてそれぞれの論点を支える文献(根拠や事例、着眼点、本文で批判する反対意見)がそれぞれあるはずです。一つの文献が二つ以上の論点を支えている場合もあります。

アウトラインとざっくりと照らし合わせ、各論点にかかわる文献をあげてみます。文献が不足している部分があるなら、自分で調べる以外に、担当教員や図書館で相談するとよいでしょう。

◆ 主題文:〇〇は××だ。
◆ 論点1:なぜなら〇〇は××の一つである△△だからだ。
 参照する文献:文献A(根拠1と事例1)、文献B(事例2)
◆ 論点2:〇〇は□□を条件とするが、この□□という条件を支えているのが実は××でもある。
 参照する文献:文献A(着眼点)
◆ 論点3:一方〇〇は××ではないという意見があるが、それは〜〜という理由で当てはまらない。
 参照する文献:文献C(反対意見)、文献D(文献Cの意見に対する批判で自分自身が同意するもの)


もしこのように文献を使う予定であれば、文献AからDすべてを参考文献リストに入れます。

参考文献リストの作り方は、その分野によって違います。初めて作る場合や様式に不安がある場合は、こちらのサイトが参考になります

構想段階の文献リストは、それぞれの概要を知ったうえで、押さえておくべきもの、使えそうなものをあげておきます。リストにあげた文献すべてを完全に理解し読みおわっている必要はありません。丁寧に読んでみたら使えない文献というのもあります。最終稿で参照しないものがこの時点で入っていても(不要ならばあとで抜けばよいので)全くかまいません。

■ 仮のタイトルをつけてみる
「問題の所在」、「主題文」、本論の構成を示した「アウトライン」、現時点での「参考文献リスト」を書けたら、リサーチペーパーの「タイトル」をつけてみます。こたえは「問題の所在」や「主題文」のなかにあるはずです。

「タイトル」のつけかたは、これも担当教員によって期待されるものが異なります。疑問形にすべきとされたり、文字制限があったりします。よくある「〇〇についての考察」が認められない場合もあります。授業課題としてリサーチペーパーを提出する場合には、最終的につけるタイトルの要件について担当教員に確認しておきましょう。

■ 他の人の意見を聞く

ここまでの作業をまとめA4用紙2ページ以内に仕上げてみましょう。項目としては、次の5項目になります。

1. タイトル
2. 問題の所在(400-600字、英語なら250単語)
3. 主題文(80字、英語なら25単語)
4. アウトライン
5. 参考文献リスト


リサーチをさらに進め本文を書き始める前に、このアウトラインをベースに、他の人と話してみることをおすすめします。可能なら担当教員に、難しければ信頼できる勉強仲間やLALAデスクに相談してみてください。

次回はスケジュールについて考えます。

リサーチペーパーの始め方 [第1回] [第2回] [第4回
#ジャニス #レポート・論文

リサーチペーパーの始め方 (2):資料を特定する

20190801日(木)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。
(きょう8月1日は木曜日ですが臨時在席しています。)

● リサーチペーパーの始め方 目次
第1回 下調べのまえに
第2回 資料を特定する
第3回 全体の構成を考える
第4回 スケジュールを考える

1回目に紹介した方法を試したけれど(もしくは試してもいないけれど)、適当なテーマが思いつかない、主題が大きすぎる/小さすぎる、トピックを指定されたが関心が持てない、というときはどうしましょう。

また一つのリサーチペーパーで、考えたことを全部使うことはできませんし、しません。調べたことを全部使うこともできません。最終的な文章が、押さえるべき情報は押さえたうえで、散漫で表層的なものにならないためには、リサーチで得られたものを取捨選択する必要があります。

リサーチペーパーの始め方の2回目は、調べものをするなかでこうした問題を解決していく作業を提案します。

■ 一次資料と二次資料
今回は二次資料を使ったリサーチペーパーを考えます。これは二次資料を使って、限りなく一次資料に近づく方法で、一般的な論文でいうところの先行研究レビューに近いものです。

何を一次資料とし、何を二次資料とするかは、何をどのように調べたいかによります。実験レポートを書くのであれば、実験データは一次資料で、データを分析した論文は二次資料です。そうした論文の言説分析をしようとするなら、それらの論文は一次資料、さらにそうした論文を分析したものが二次資料です。

■ 分野の必読文献を特定する
まずは必読文献と思われるものを探しましょう。授業のなかで、そのような文献を紹介されている場合もあるでしょう。まずはそういった書籍や論文から読んでいきます。

検索する際には、テーマだけではなく、著者名でも検索してみましょう。特定の書籍が手に入らなくても、当該書籍の著者が書いた論文や、その人が書いたものが収められた論文集、あるいは別の著作であれば、自分が利用している図書館に入っている場合があります。

大学図書館の本棚には当該分野の必読文献といわれるものが入っていることが多いです。お茶大を含めた大学図書館の蔵書を調べるときはCiNii Booksを利用します。

借りやすさでいうと地域の図書館の方が便利か文字色もしれません。カーリルで東京都の図書館横断検索をしてみてもよいでしょう。

また実店舗の書店の棚をみると新しい動向や話題になっているトピックがわかります。ただしオンライン書店の検索機能は(それ自体を研究対象とするのでなければ)大学の課題等にかんする参考文献を探すのには向かないことが多いので注意しましょう。

学術書の後ろの参考文献の一覧に繰り返し挙がるものは(批判対象であっても)この分野を研究する以上読むべきものである可能性が高いといえます。

入門書や教科書も見てみます。今回考えているのは二次文献調査ですから、三次文献とでもいう入門書や教科書が参照している二次文献はおそらく押さえておいた方がよい文献である可能性が高くなります。さらにそのなかでも本文で言及されているものはその確率が高いといえます。

教科書的なものを見つけるためには、専門の教員に直接尋ねる以外に、大学の授業シラバスに掲載されている文献を見てみる方法があります。お茶大の授業シラバスに掲載されている指定文献はすでに付属図書館に収蔵されていることが多いです。

他大学のシラバスを探すのであれば、たとえば科学言説のなかのジェンダーについて調べたい場合なら、Googleなどの検索エンジンで「ジェンダー 科学史 テキスト 授業 シラバス site:ac.jp」と入れてみると読むべきものが見つかるかもしれません。(site:ac.jpで日本の高等教育・研究機関にほぼ限定できます)また英語文献で、たとえばトランスジェンダー研究の文献が載っていそうな米国の授業シラバスを見たいのなら「transgender studies introduction syllabus site:edu」といったキーワードを入れて調べます。

何から読めばいいのか分からない場合は、専門の教員に聞いたり、図書館で尋ねてみたりする以外に、LALAデスクも利用してみてください。

■ テーマが迷子でどうしようもないとき
資料が多すぎたり少なすぎたりして、どうしたらいいのか分からないときは、ノック式でいきます。学術データベースを一つ使って(たとえばCiNii Articles)、キーワード検索し、見つけた論文を読んでいきます。といっても全ページは読みません。また完璧主義な人ほど、読む論文の数やスケジュール的にかけられる時間を決めてから、作業に取り組むことをおすすめします。

結果として読みきれない量が出てきた場合には「被引用件数」順に並べ替えたり、時期を絞ったり、キーワードを増やしたりします。あまりにも結果が少ないときは、キーワードの数を減らしたり変えてみたり、また思っていたような文献に当たらない場合も、キーワードを変えてみます

面白そうな論文を見つけたら、もしくはちょっとでも関係がありそうな論文はまず要約を読みます。その先を読みたくなったら二段組みなら最初の2ページ、一段組みなら最初の4ページを読み、註か末尾の参考文献一覧を見ます。2ページや4ページだけではどういうものか判断がつかない場合や残りも読みたい場合は、文献情報を記録し、PDFをダウンロードし、必要なら印刷して整理していきます。

これは「雑」な読み方ですが、こういうことを調べたい、この本を読んでみたい、この論文は重要そうだ、ということがわかってきたら、そこから丁寧な読み方に切り替えます。ここでいう丁寧な読み方とは批判的な読み方のことで、方法としてはこちらの「クリティカル・リーティングを行う」解説ページ が参考になります。

次回はリサーチペーパー全体の構成を考えていきます

リサーチペーパーの始め方[第1回][第3回][第4回


#レポート・論文 #ジャニス