英語の学術書を読むときのヒント 第2回

20190531日(金)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

前回に引き続き、英語で書かれた人文系や社会科学系の学術書を読むときのヒントをいくつかご紹介します。

■ 本全体の内容をつかむために序章を読む。
Introductionと題された章(序章)はあるでしょうか。もし非常に急いで特定の章を読まなければならないというのでなければ、そこをまずは読んでみます。序章は必ずしも分かりやすいとは限りませんが、英語の文章構成の決まりで重要な要素がすべて詰まっています。

序章には何よりもまず、この本全体の問いが何なのかが書かれているはずです。そこを探すつもりで読みます。最初に読んで難しいのなら、あとの章を読み終わって戻ってくればよいので、諦めてはいけません(著者はきっと序章をすべてを書き終わったあとに書いているはずです!)。そして本の内容を説明しようとしている箇所(とくに一人称単数の代名詞が出てくるところやタイトルなど本全体を指すところ)を見つけていきます。

またIntroductionの最後に、一般的には本全体の章構成がまとめられています。この部分は各章を読み始める前に、たちもどって読んでみると理解の助けになるはずです。そしてこの部分のすぐ手前に、本全体を通じた主張や研究課題が比較的短く述べられている可能性が高いので、その部分にも注目しておきましょう。

典型的な序章の構成は次のようなものです。そして、このなかで最も注目すべきは2になります。
0. エピグラフ(本や章の初めに記される短い引用文など)
1. 著者が当該書を書くにいたった社会的・学問的な背景
2. 当該書全体の問いや主張
3. 全体の章構成

序章の前にPrefaceがあれば、それも読んでみるのもいいでしょう。ただしPrefaceは抽象的であったり初読では難しく感じることが多かったりするので、後回しにしてもかまいません。

■ 理論や分析枠、先行研究についての章を読む。

多くの学術書では先行研究や理論についての章が序章のすぐ後に続きます。ここでは先行研究や理論が何をどう検討し論じたのか、何をどう検討せず論じなかったのか、そうした先行研究に対して著者はどういう立場を取っており、当該書はどのように位置づけられるのかが書かれているはずです。

本全体のキー概念となる言葉は、たいていこの部分に出てきます。初めて紹介されるときには、当該書が依拠する定義が提示されるので、そこに注目します。あとの章を読む際すぐ参照できるように手元に書き出してもよいでしょう。

通常分析の枠組みとして参照される理論は一冊とおしてそれほど多くないはずですが、全く縁のない理論家が出てきて圧倒されそうになるかもしれません。すでによく知られた理論家なのであれば、当該書と並行して入門書を読む必要があるかもしれません。

■ 3章目以降の各論を読む。
先行研究や理論についての章が終わると、そのあとに各論が続きます。各章の簡潔なまとめは序章終わりの章構成を説明した箇所にも書かれている可能性が高いので読み始める前に確認しておきましょう。

各章が参照している国や地域があればその場所についての概説を、歴史的背景や出来事が対象なのであれば事実関係を確認してから読み進めたほうが理解しやすくなります。高校生や一般向けの世界史の解説書やドキュメンタリー映像なども助けになります。また分析対象となっている映画を見たり、小説を読んだり、取り上げられているアート作品について調べることは必須ではありませんが、内容をきちんと理解したいのであれば、そうした作業が追加で必要になるかもしれません。

そしてその本が教科書的なものであればかならず、そうでなくてもおそらく、各章にはまとめの節や段落があるはずです。急いでいるときは先にそれを探して読む方法もあります。

各章の終わりには、次章への橋渡しとなるような文があるはずです。ロジックを追う上で重要な部分なので、注意して読みましょう。

■ 終章を読み序章に戻る。
学術書の最後を締める章は、本全体を通したそれまでの議論全体のまとめをしている場合が多いのですが、ここにきて読者に議論全体を俯瞰するよう観点の転換を迫り、ほとんど初めてとしか思えない議論を持ち出すタイプのものがあります。

終章を読んだら再度序章を読み返してみます。序章には終章をそのように書かなければならない理由が書かれているはずです。冒頭にエピグラフがあればそれを含めて読み返し、本全体の主張や研究課題を再度確認してみます。どうでしょう。序章で提起された問題にこの本は答えていたでしょうか。

ここまできて一読者であるあなたが読み取ったところの提起された問題は何で、それに対して著者がどのように答えたのか、という部分をまとめると、本全体の要旨になるはずです。この要旨は、先に読んだ書評の要約や、出版社が宣伝文句にしていたコピーと合致するでしょうか(理論的には一致するはずですが…)。

■ いまの自分自身をこえて読んだものを共有する。
だれかの書評や翻訳、解題や解説、紹介文、そういったものには、あなたと同じ本を読んだ、別の読者の解釈を含めた理解が示されています。読書はそのときどきの読者一人きりで完結するものではありません。

その本を読むことになった理由はゼミで報告するためだったかもしれませんし、論文やレポートを書くためだったかもしれませんが、そうした目的以上に、書かれていたことはあったはずですし、ご自身が読み取り考えたこともあったはずです。そうしたことを書き残しておくのは(時間や労力を要するのでなかなかできなかったりするものですが)おすすめです。もし目次を書き出していたら、それを骨組みにして、章ごとのまとめや疑問点を書いておくのもよいでしょう。

いまのご自身の記録は人と共有するためや、大学での課題のためだけでなく、何年先であっても、未来のあなたが再び思索を深めるとき、必ず助けになります。

第1回はこちら

英語の学術書を読むときのヒント 第1回

20190527日(月)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

今回は2回に分けて、英語で書かれた人文系や社会科学系の学術書を読むときのヒントをご紹介します。[第2回はこちら

英語で書かれた文章がうまく読めないなあ、というときはいくつか理由があると思います。

英語が第二言語だからうまく読めないことは確かにあります。ただ難解な学術書を読む際、語学力の要素だけを取り出すことは意外と難しいものです。語学力の問題だけではない「困難」を扱うにコツはあります。ここでいう学術書というのは、講義形式の授業で使われる教科書やジャーナリスティックなレポート、エッセイ集、文学作品などとは読み方が異なります。

読みたい本と同じ分野か隣接分野の、ご自身が得意な言語の(たとえば日本語の)本を読んだ経験が、読みたい本を読む助けになることは大いにあります。語学の勉強は続けながら、それと並行して同じ分野やテーマを扱った中高生向けや一般向けの書籍(新書や選書)、学部一年生向けの入門的な教科書といった、自分が比較的読みやすいものを集中的に読んでから難解な専門書に挑戦してみると意外なほど読めたりします。少なくともそうした蓄積なしに読むより、はるかに正確に深く理解できるはずです。

そして英語力も知識も十分についてから読む、ということができればいいのですが、特定の本は今学期あるいは今月、もしくは今週中にどうしても読まなければならないことがあります。そんなときは、どうしたらいいでしょう?

■ 翻訳が出ていないか探してみる。
本一冊すべてが訳されていれば、それを読んでみます。一般に翻訳は原著発表後翻訳時点での日本語圏での最新の研究知見が反映されているものです。あとがきなどで翻訳者やその分野を専門とする研究者による解説があれば、それも読みましょう。もしも当該書籍の翻訳がなくても同じ著者による別の著作の翻訳があるのなら、それを読んでみます。

たとえば過去に雑誌『現代思想』や『思想』、大学の紀要などに、同じ著者による論文や本の抜粋が翻訳されていることがあります。そういった翻訳がないか探してみましょう。翻訳と一緒に「解題」や「解説」が添えられていることもあります。合わせて読んでみましょう。

■ すぐに読まない。
該当書の学説史上の位置づけが分からない。全体的な内容理解が不安だけれど、何から手をつければいいのか分からない。あるいは最初の数段落/数ページで難しすぎて挫折した。量が多くて辛い。日本語の文献でもこんな経験はありませんか(わたしはあるのです)。

そのような場合は、読み始める前に書評を、できれば複数読みます。相手はミステリーやサスペンスのフィクションではありませんからネタバレは問題ありません。書評はほぼ確実にその本の時代的・分野的な位置づけをしています。また内容の要約もされています。当該書をまだ読んでいない人にわかるように書かれ、それ自体独立した文章なわけですから、最初からその本を読むより理解しやすいはずです。タイトルや著者の名前を手掛かりに学術系のデータベースを検索してみましょう。

重要な論文は、当該分野で授業の副読本として使われる論文集などに収められている場合があります。そのような場合、セクションごとに説明が添えられていることがあります。そういった学習者向けの解説は時代や分野の背景を簡潔に説明していることが多く理解の助けになります。

また当該書を発行する出版社のサイトには、販促を目的としてその本の重要性が強調されて提示されています。どの分野において、どういった背景で、この議論の何に新規性があり、なぜ重要であるのかを(ときに過剰に)前面に押し出したコピーです。こうした宣伝文で分からない単語などが使われているのであれば、個別に調べておきましょう。もちろんこの時点で完全に理解できなくてもかまいません。

■ 初めから全部を読もうとしなくてもかまわない。最初から最後まで通して読まなくてもかまわない。
英語の学術書は、過去の論文をまとめて一冊の本になっていることがあります。一冊すべてを読み通すことが難しい場合は、本全体を急いで読んでぼんやりとした理解で諦めるより、所収されているなかで最も評価されている(よく引用される)論文(章)を選び、それを精読した方がよい場合もあります。

もし特定の章がとくに気になるのであれば、その章から読み始めてもかまいません。また巻末のインデックスで自分が気になっている概念をみつけ、その前後から読み始めてもかまいません。よく引用されている箇所があるのであれば、その部分が含まれる章から読みはじめても全く問題ありません。

■ 本全体の構成と、その本が書かれた文脈を知る。
本の副題や、章題には重要な概念(用語)が含まれていることがよくあります。目次を読み、何なら目次を書き写し(書き写した目次はノートを取る際の骨格としても使えます)、分からない単語があればこの時点で調べ、キーワードはその分野の用語集や百科事典等で、意味を確認します。同分野の教科書や入門書が手元にあれば、そうした学習者向けの解説を確認するのもよいでしょう。

お茶大図書館のデータベース・電子リソースの「ものごとを調べる(辞書、辞典、統計・・・)」カテゴリーにあるリソースが助けになるかもしれません。
https://www.lib.ocha.ac.jp/db_resource.html

難解な用語や造語、辞書に載っていない言葉が使われていることもありますが、全体の構成を示すものですから、当該書籍が対象とする読者層にとって見当もつかないことはあまりありません。またなぜその章題がついているのかを考えながら読むことは理解の助けになります。

巻末に参考文献があれば、それも見てみます。文献のなかに知っている著者名や著書・論文はあるでしょうか。もし見慣れないものばかりであれば、少し覚悟が必要かもしれません。逆に、以前から読んでみたいと思っている本が含まれている場合、また参照されている文献の日本語翻訳があれば、そちらを先に読んでみるという手もあります。

では、次回は実際に読んでいきます。

第2回はこちら

自己紹介&Power Pointでの発表を控えたあなたへ!

20190523日(木)
はじめまして!この4月からLALAに新しく入った菰田です

現在、博士前期課程の2年生。発達臨床心理学を学んでいます

2年生になって、授業数は格段に少なくなりましたが、
私の在籍するコースでは、将来、臨床心理に携わるための準備として
(2018年に第1回目の試験が開催された国家試験「公認心理師」と「臨床心理士」の資格取得可能なコースのため)

学内に置かれている心理相談室に問い合わせのあった方へのカウンセリング(臨床実習)や、
医療・教育・産業労働・司法・福祉分野で実習(450時間)があります
さらに、今年度1月には修士論文の提出を控え、ぐわ〜っと交感神経が活発化する毎日が続いています!

まさに今、就職活動をしている人、公務員試験を受ける人、後期課程への進学を目指してより研究に本腰を入れる人など、それぞれが自分の可塑性を信じて切磋琢磨?している状態です。

私たち人間には危機的状況に立った際に生じる動物的本能「闘争・逃走反応」があるのをご存知ですか?
例えば、呼吸が荒くなったり、発汗したり、脈が早くなったり、という迫る危機に備えるための生体反応のことです。
私たち院生も、今まさに知能に加えて動物的本能をフル稼働して?それぞれの将来のために、局面に挑んでいる状況です

さてさてそんな状況の中で、先日「研究法」の授業の発表担当でした。臨床心理学は統計を活用した研究がベースとなりますが、この授業は、統計の基礎から応用、さらにその手法を使った研究論文を発表していくものです。

作りましたよ、発表資料のパワーポイントを。ゴールデンウィーク中に
さすがに院生活も2年目。「見る人にわかりやすい」「伝えたいことが数ミリ割増になるような」パワーポイントを心がけたつもり、です。

そして、発表が終わってすぐにこのLALAのバイトにきたんですが、見つけてしまいましたこの本を。
IMG_5773 20190523


発表の直後に

結論としては、見たかった、発表前に・・・
やはり、論理的に「どう見せる」かを学ぶことは、自前の「見えやすい分かりやすいであろう」理論を修正してくれます。
研究同様、発表資料やその内容には、客観的な視点が欠かせないですね。
そして、一度しっかりと基礎的知識を学んでおくと、発表への自信へと寄与してくれる気がしました。
ぜひ、手にとってみてくださいね!

他のLALAさん同様、実習に、研究に、授業に、学会発表に(プライベートに)と、スリリングな毎日の中で、様々な情報を発信していきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

#こもだ


LALAセミナー報告 その2

20190520日(月)
こんにちは
LALAの中村です。

今日は、春のLALAセミナーの報告その2をさせていただきます!

春のLALAセミナー
『文系LALAによる修士論文体験談 〜ゼロからのスタート〜』
報告その2
本日のテーマは、
「情報を活用せよ」
です!


皆さんは、学内の情報をどこから手に入れていますか?
ご存知の方には当たり前のお話かもしれませんが、
修士課程からお茶大へやってきた外部からの進学者にとって、
最初は分からないこと、慣れないことがたくさんありました。
以下、私がよくチェックする情報スポットです

①学内掲示板
サークルの情報なども多いのですが、
それにまぎれて集中講義、講演会、不定期開催のセミナー情報が掲示されます。
ちなみに、学生・キャリア支援課の掲示板ではアルバイト情報も掲示されています(余談ですが。)

②OchaMail
お茶大アカウントのメールアドレスに月2回配信されるOchaMail、
皆さん、チェックしていますか?
奨学金や公演の割引チケットの情報なんかも載っていたりするので、
意外と見逃せません・・・!

③HP、SNSなど
ちなみに、このLALA Tipsが更新されると、
「お茶大図書館Lisa」のTwitterにツイートされるので
是非チェックしてみてください。


さて、これ以外にもたくさん情報を得る手段はありますが、
私がもっともオススメしたいのは、


④他分野の知り合い、先輩からの情報
学内のつながりを有効活用するべし
ということです。
文系では皆独自の切り口と方法で研究を進めるので、
同分野の人であってもなかなか話しづらいことがあります。
他分野の人との会話には新しい発見があり、迷いが一気に解決する時もあります。
また、先輩から得られるオススメの講義情報や研究に関する情報も重要です。


ここでさらにポイントなのが、
1.どこで他分野の人と知り合うのか
2.どうやって情報を引き出すのか

この二点です。


私の場合、
1.どこで他分野の人と知り合うのか
  →共通の授業、学内アルバイト
2.どうやって情報を引き出すのか
  →常日頃から自分の興味関心を積極的に話す

という方法で、いろんな人から情報を得ることができ、
それが最終的には修士論文の執筆に大いに役立ちました。
自分だけで解決方法が見つからない時、
誰かに助言をもらうことで前に進める場合があります。
助言をもらえる関係性を作るためにも、
積極的に自分のこと(考え)を話す。
これがとても重要だと思います。


まずは、自分の考えを人に話すきっかけとして、
LALAデスクを気軽に活用してみてくださいね。

#中村

LALA文庫紹介『学びを結果に変えるアウトプット大全』

20190515日(水)
こんにちは!LALAの小林です。

授業や読書や学会など、大学生活では新しいことを学ぶ機会がたくさんありますが、
「その割に学んだことが身についてないな〜」と感じることってありませんか?
本を読んでもすぐに内容を忘れちゃうとかよくありますよね?
私はあります。

というわけで、今回のテーマは「身になる勉強法」!
そのヒントになりそうな本をご紹介します。

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『学びを結果に変えるアウトプット大全』
樺沢紫苑 サンクチュアリ出版 [LALA文庫 F7]
※LALA文庫は館内利用のみです。



📖オススメポイント📖
●アウトプット→フィードバックで自己成長
本書はアウトプットのメリットを丁寧に説明していますが(第1章)、中でも重要なのは
・学んだことが記憶に残る
・フィードバックがもらえる

の二点でしょう。大学はフィードバックが貰いやすい環境
これはもうアウトプットするしかない!

●自分に合わせた勉強法を選ぶためのヒントが充実
「話す」「説明する」「書き出す」「構想をまとめる」などなど
今すぐ実践できるアウトプットのヒントが盛りだくさん。
特に、第3章には考えていることを書き出すときのアイディアがつまっているので、
論文やレポートがなかなかまとまらないという人は必見です!

●ツール別メリット・デメリット表が便利
デジタル作業とアナログ作業のメリットデメリット(p.154)や、
ホワイトボードとスライドのそれぞれの特徴(p.160)が表になっているのが便利!
私は常々「ノートをデジタルとアナログどっちでまとめるのがいいのかな〜」と悩んでいたのですが、
「全体を大雑把に捉えるアナログ。詳密、精密につめていくデジタル」(p.155)という感じで
ツールの使い分け方が説明されていてとっても参考になりました!




LALAではみなさんの学習に関するご相談を受付中!
考えていることや悩んでいることを「話す」のも大事なアウトプットのひとつです。
日々勉強をより充実させるアウトプットの場として、LALAデスクを是非ご活用ください!

#小林 #LALA文庫

バリアフリーと情報保障

20190510日(金)
こんにちは、はじめまして!

2019年4月からLALAデスクに週2回います、ジャニス(ジェンダー社会科学専攻 開発・ジェンダー論コースM2)です。
きょうは、バリアフリーと情報保障について、ご紹介します。

さて先日小林さんがブログで紹介されていた書籍『伝わるデザインの基本』の増補改訂版が2016年に出ました。まもなくLALA文庫と開架にも入るとのこと、ぜひご利用ください。

こちらは書籍版の方が断然情報量が多くておすすめなのですが、こちらの本の著者によるウェブサイトもあります。http://tsutawarudesign.com/tsutaeru.html

このサイトの「バリアフリー」のタグをクリックすると、視覚の多様性に配慮した、配色や書体・フォントについて、どのような工夫があるのかが紹介されています。
このウェブサイトにあるように、「見え方の状況は個人差が大きいため、全ての人にとって見やすい資料を作ることは難しいと思われますが、何も配慮がなされていない資料よりは、少しでも見やすく配慮された資料の方がより多くの人に情報を伝えることができるはずです。」

では、具体的にどのような配慮ができるでしょう。

以前から比較的知られているものとしては、色覚バリアフリーの取り組みがあります。
そもそもどんなバリアがあるのかは、こちらのサイトに詳しいです。「色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法」 (2005) https://www.nig.ac.jp/color/gen/

わたし自身、このサイトで、「区別が必要な情報を色だけに頼って識別することを強制しない」「色なしでも理解できるようにデザインし、その上で強調のために副次的に色を添える」ということを学びました。

その他、最近とくに注目されているものとしては、判読性の高いユニバーサルデザインフォント(UDフォント)があります。UDフォントを初めてみる人は、たいていその見易さに驚きます。普段のレポートやレジュメのフォントをUDフォントに変えてみるのもおすすめです。

ちなみにUDフォントの一つである「UDデジタル教科書体」はWindows 10に搭載されています。どんな見え方の違いがあるのかはこちらで試すことができます。https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/3763

こうした工夫を情報保障という点から捉え直すと、情報保障にはユニバーサルデザイン=「だれでも利用できるかたちにすること」に加えて、ユニバーサルサービス=「すべての人にサービスをとどけること」が欠かせません。(あべ 2015:97)ユニバーサルサービスのめざす、情報をとどける工夫には、他言語への翻訳・通訳や、視覚テキストの読み上げや、文字情報を図解することなどが含まれます。

今年の初めには、こんな記事がありました。
「参考書点訳、数カ月待ち 勉強、仕事に支障」(毎日新聞2019年1月7日 東京朝刊)
https://mainichi.jp/articles/20190107/ddm/003/040/070000c

「紙の出版物を利用できない障害者向けの本や雑誌は少なく、勉強、趣味、仕事とさまざまな面で社会参加の障壁になっている。出版物の電子データが提供されれば読書環境が大きく改善される可能性があるが、毎日新聞のアンケートからも、海賊版被害を懸念する出版業界の抵抗感が根強いことがうかがえる。」


大学教育や研究の場で情報発信や伝達がうまくいかない理由は複合的です。個々人の工夫で解消できるバリアだけではないので、組織や制度の面から様々な取り組みがされています。
以下リンクのみ挙げます。お茶大でもこんな配慮や継続的な支援の仕組みがあればいいな、と思うものがあるかもしれませんね。
・東京大学バリアフリー支援室 (2016)「障害のある学生へのバリアフリー支援ガイド」PDF http://ds.adm.u-tokyo.ac.jp/material/pdf/20160421132857.pdf (2019年5月8日アクセス)
・神戸大学 キャンパスライフ支援センター サポートの流れについて > 修学上の配慮について http://www.kobe-u.ac.jp/SCCL/support/consideration.html (2019年5月8日アクセス)

参考文献
あべ・やすし著 (2015)『ことばのバリアフリー : 情報保障とコミュニケーションの障害学』 (生活書院) ← 請求番号:369/A12 (お茶大図書館にもあります!)

#ジャニス

LALA文庫紹介!『音楽の文章術 Writing about Music』

20190510日(金)
こんにちは🌺 新人LALA(金曜日担当)の、林いのりと申します(^∇^)
専攻は比較社会文化学(領域は表彰芸術論)で、博士後期課程1年生です。お茶大には修士課程からやってきましたので、今年で3年目です。お茶大について私も日々勉強中ですので、どうぞ宜しくお願いしますp(*^-^*)q

さて、今日は自己紹介代わりに?、私の専門である音楽学に関連した1冊をご紹介したいと思います。
特に、音楽分野で文章を書く方にお薦めですが、どの分野の方でも参考になる1冊だと思います。

LALA文庫 C-14
音楽の文章術 Writing about Music : An Introductory Guide
リチャード・J・ウィンジェル 著
宮澤淳一、小倉眞理 訳

Amazonリンク

一般図書にもあります (760.7/W76)

この本の凄いところは、

とにかく具体的!痒いところに手が届く。
本文よりさらに具体的!これさえあれば大丈夫、な巻末付録
英文での執筆作法についての知識がつく

です! 順番にご説明しますと・・・

①とにかく具体的!痒いところに手が届く。

音楽のような芸術分野は特に、受容するにしても発信するにしても、個人の感覚で判断するという性質が強いため、なかなか多くの「他人」に向かった、説得力のある文章を書くことは難しいです。
この本は、アメリカの音楽大学や普通大学の、音楽に関する授業での、論文やレポートの執筆方法について、非常に具体的に解説してくれています。例えば・・・

☆テーマの絞り方(どこまでリサーチすればいいの?)
☆情報収集の仕方(JSTORのような電子媒体にも対応した解説)
☆書式(良い例、悪い例)
☆言葉づかい(良い例、悪い例)
☆参考文献、資料の書き方

「テーマ設定」から「参考文献一覧表」まで、これに沿って書いていけばレポートが書けてしまう気がしてきませんか?(((o(*゚▽゚*)o)))


②本文よりさらに具体的!これさえあれば大丈夫、な巻末付録
本文だけでも素晴らしいのに、一見の価値あり!なのは巻末の3つに分かれた付録です。

付録A :レポートの実例
付録B :参考文献一覧の実例
付録C :レポート執筆に参考になるサイトや文献の紹介

実際の模範的な執筆例を、横に解説を加えながら示してくれています。
書式で混乱しがちな「参考文献一覧」は、アメリカを中心に広く採用されている、シカゴ・マニュアルに則っています。


③英文での執筆作法についての知識がつく
著者はアメリカ人ですので、「英語での執筆例」の添削が豊富にのっているところも、本書の大きな魅力です!そしてさらには!翻訳者による、「日本語の場合ではここに気を付けて」という注釈までついているのです。1例をご紹介します♪

☆ アドバイス「装飾語に依存してはいけない」
  ➡ 副詞(somewhat, virtually, literally, perhaps、等)を減らすと引き締まった文章になる。
!日本語の場合
  ➡ 強調の修飾語は不要。非常に、極めて、決して~ではない、等は削った方が、主張の説得力が増す。

このように、英語と日本語両方の執筆作業を助けてくれるのです!


長くなりましたが、出会いが早ければ早いほどお得な、それでいて私のような博士後期課程の学生にも大変参考になる1冊です
ぜひ、気になるところを少しだけでも、LALA文庫に立ち寄って読んでみて下さいね。

#林 #LALA文庫

LALAセミナー報告 その1

20190506日(月)
こんにちは!
LALAの中村です。
GW最終日のはずですが、お茶大は今日から授業が再開されましたね。
大型連休、皆さまどのようにお過ごしだったのでしょうか。

今日は、連休前に開催した春のLALAセミナーの報告をさせていただきます。
当日、お越しいただけなかった皆様にもお伝えしたい内容を、
何回かに分けて投稿していきますね。


春のLALAセミナー
『文系LALAによる修士論文体験談 〜ゼロからのスタート〜』
報告その1
本日のテーマは、
「ゼロからどうやって研究計画を立てたのか」
です!


私は学部卒業後、社会人になった後にもう一度勉強をしたくて
大学院の舞踊コースへ進学しました。
理系→文系
農学→舞踊
という畑違いの分野から来たため、
勉強の仕方も研究の仕方もゼロからのスタートでした。
修士一年目の前期は右も左も分からず、
研究も進まず、苦しい日々でした(;д;)

今から振り返ると、研究がスムーズに行き始めたのは
研究方法を決める
研究対象を決める
この二つをクリアした後でした。

セミナーではどうやって私が①研究方法②研究対象を決めたのかについて
お話しさせていただきましたが、
今日は簡潔にポイントだけお伝えします。

この二つを決めるときにポイントになったのは、
「大学院への志望動機」
でした。
なぜ、大学院へ進学したかったのか。
何を、研究したかったのか。
自分の問題意識の根っことなる「志望動機」まで振り返ることで、
自分の興味関心からぶれずに研究方法・対象を定めることができました。

実は、これ、LALA文庫C11『研究計画書デザイン』に同じことが書いてあります。
本書は過去にナターリアさんが紹介してくださっています。
研究計画書デザイン
問題関心からテーマを絞っていくことに対して、本書では以下のように説明しています。

”自分の個人的な体験や経験の中での、ぼんやり漠然とした関心を、自分の将来の専門性へ少しでも近づけるために、その研究テーマへ向けて、自分を自分を極端に自覚化させ、意識化させていくという作業”=問題意識化

テーマを一つに絞り込むために

動機(なぜ)…テーマを選んだ理由
具体例(だから)…それを説明するエピソード
当面の結論(と考える)…自分の考えのまとめ

という手順を踏むと良いと書かれています。
この具体例が研究のオリジナリティに繋がっていくそうです。

本書の後半では論文の書き方についての指南もありますが、
是非研究生、修士1年目で
これからどうやって研究をしていこうかと考えている方々にオススメしたい一冊
です!


LALA文庫の紹介にも派生しましたが。
今回の報告その1のまとめは、
「動機から研究方法・対象を決める!」です。
まずは、自分の考えの中に深く潜って自問自答する時間が必要かな、
と個人的には考えています。

自分の考えを整理するために、人に話を聞いてもらうことは有効です。
考えすぎてよく分からなくなった時は、
気軽にLALAを訪ねてきてください(´∀`*)
いつでもお待ちしてます