親切知的で面白い『映画で実践! アカデミック・ライティング』

20190712日(金)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

今回は2019年6月に新しくお茶大図書館に入りました、カレン・M・ゴックシク/デイブ・モナハン/リチャード・バーサム著,土屋武久訳『映画で実践! アカデミック・ライティング』 (2019、小鳥遊書房) のご紹介です。

LALA文庫では、B棚「レポートや論文作成など、大学での学びに関するもの【初級〜中級】」の最新追加分、B17の記号がついています。

大学の授業では、映画研究を専門としない授業でも、映画についてレポートを書くことを求められることがあります。しかし、あらすじでも、感想文でも、宣伝でもないものを書くとなるとどこから手をつければよいのか…これは、そんなときのお助け本です。

もちろん、今後映画を含めた映像メディアや舞台芸術や文学を研究していきたい人には、映画を題材にアカデミックな文章を書くうえで基本的な考え方が学べる一冊になっています。

本全体は3部構成です。

第1部は映画について書くことに特化するかたちで、何に着目して映画を「読む」のかを解説しています。第2章「映画を鑑賞する」に書かれているメモの取り方は、疑問を生み出すところから、プロットを分割し、ショット分析チャートを書く段階にいたるまで、大変詳しく親切に案内されています。メモ取りは職人技のようなところがあり、なかなか教わる機会がないので、こういう解説は貴重です。

第2部は書くプロセスについてです。アイディアの生み出し方から、主題の温め方、構造・構成の検討、推敲過程まで、映画研究に限らず、どの学問領域でも求められるアカデミック・ライティングの要素が詰まっています。長くないのですが (95-172) 、簡潔で的確なライティング・ガイドとして分野を問わず一読をおすすめします。

そのなかの第6章「映画を研究する」では資料の用い方が解説されています。なかに、こんな一節があります。

自分の議論をかすませることなく、資料が実際に自分のために働くようにするには、いくつかのステップがあります。第1に、テーマを自分自身でじっくり考えてみないうちに、図書館に行ったりネットで調べたりしないこと。研究を進めていくと、それが自分の考えに影響するのは間違いありません。ときには、自分の意見を取り下げることだってあるでしょう。しかし、テーマをある程度考えてみないうちに図書館に行くならば、たまたま最初に出くわした説得力ある議論に飛びついてしまうリスクがあります。(120)


これは意外と陥りやすい罠かもしれません。手元にスマホやパソコンがあったらネットで何でも調べられる時代です。映画の評価や分析もインターネットで見つけやすいものがあるからこそ、調べるまえにまずは考え、調べたあとにまた考える、というステップを意識してみることは大事なことだと思います。

最後の第3部は横書き、本の末尾から始まる充実の用語解説集。とくに映画研究を学び始めた人にとって、一度目を通しておいて損のないものでしょう。

お茶大図書館では、館内利用のみのLALA文庫 (B17) のほか、一般図書 (778/G54) の棚にもあります。ぜひ一度、手にとってみてください。