LALA文庫紹介『質的社会調査の方法 : 他者の合理性の理解社会学 = Qualitative research methodology』

20230621日(水)
こんにちは!LALA水曜日担当の杉山です。
先週に引き続き、LALA文庫を紹介しつつ質的な研究のお話をしたいと思います♪


授業の課題でアンケートインタビューをすることになった…
卒業論文や修士論文で質的研究を考えている…

そんな方におすすめの1冊をご紹介いたします!!!


質的社会調査の方法 : 他者の合理性の理解社会学
= Qualitative research methodology』

岸 政彦・石岡 丈昇・丸山 里美[著]
有斐閣
LALA文庫:C20
請求番号:361.9/Ki56
[OPAC検索結果はコチラ]



今回ご紹介するこちらは、質的な調査を始める前に(もう始めていても)ぜひ読んで欲しい、質的調査を行うにあたっての心構えがよくわかる内容となっています。

おすすめポイント

●調査者と調査対象者との関係性についての心構えができる
 → 調査者という立場で気をつけるべきことが、あらゆる調査パターンで書かれています。フィールドに行く前に、対象者に会う前に読んでおくと心強い!

●著者の実際の学生時代の経験が織り込まれているため、実感を持って読みやすい
 → 著者が経験してきた事例が各調査段階で豊富に記されています。もちろん、調査の形は調査者の、対象者の、フィールドの数だけありますが、参考になること間違いなし…!調査依頼書の見本なども記載されています。

●調査して論文にするところまでの流れもわかる
 → 調査はした、けれどもどうやって論文にまとめれば良いのか?そのプロセスについても丁寧に書かれています。他者に伝えるために大切なことと、それを踏まえた調査のデザインがわかる!




質的な調査では、刻一刻と変化していくフィールドや調査対象者にワクワクする一方で、トラブルが起きたり予想外の展開になることも少なくありません。
だからこそ、柔軟に調査を進めていくことが求められますが、この一冊はそんな調査者であるあなたを助けてくれるはず。

質的調査ってどういうこと?と興味を持った方にも入門書として読んでいただけるので、ぜひお手に取ってみてください!

私も博論執筆に向け絶賛質的調査中なので、新鮮な経験談をお伝えできるかもしれません。
どうぞ、LALAデスクにもおいでくださいね。

杉山

多くを問う者は、多くを学び、多くを保持する〜問いを立てるための技術〜

20211101日(月)
みなさん、こんにちは。
今学期は月曜12時から14時、LALAデスクにいます萌子です。

さて、本日は
クエスチョン・フォーミュレーション・テクニック
(question formulation tehnique: QFT)

なるものを紹介したいと思います。
カタカナだらけで若干読みづらいですが、アメリカ発の教育実践で、
邦訳がないまま日本でもそのまま用いられているようです。
ここでは以降、QFTと呼ぶことにします。

なお、この手法は以下の本の中で紹介されています。

たった一つを変えるだけ:クラスも教師も自立する「質問づくり」
著者:ダン・ロースステイン、ルース・サンタナ
訳者:吉田新一郎
[LALA文庫|なし][OPAC検索結果はコチラ]


QFTーーー直訳すれば「質問を形成する技術」。
もう少しわかりやすくいえば「問いを立てるためのスキル」とでもなるでしょうか。
なにごとも思考するには「なんで?」を問うていくステップが必要です。

例えば授業で課せられるレポート作成に際しても
「なんで?」=「リサーチクエスチョン」
がそのレポートで示したい話の流れを調節する歯車的役割になります。

「なんで?」はすべてのストーリーに不可欠な要素です。
学校での学びに限らず、就職してからこの思考法があなたを救い出してくれるかもしれません。
けっして教室の中だけの話ではないということをはじめに理解して臨むことをお勧めします。

とはいえ、「問うこと」の重要性を十分承知した上で
「問うこと」自体に困難を感じている人が現代人には多いのかもしれません。
「これなんだろう」と思ってもすぐに「ググれ」と言われる時代・・・
「問うこと」の質的な意義についてが強調されるようになっている気がします。
そういう意味で時代にかなった思考法でもあるのかもしれない・・・?

というわけで、QFTを紹介します!

本書では、現役の教員たちがQFTを用いてみた実体験が
相当数紹介されながら話が展開されるので、
実例で以って具体的に理解しながら読み進めていくことができます。

大前提に、QFTには次の7段階があります。(本書p.41 表1-1 参照)
  1. 質問の焦点を決める(ファシリのみ)
  2. 質問づくりのルールを確認する
  3. 質問をつくる
  4. 質問を改善する
  5. 質問に優先順位をつける
  6. 次のステップ
  7. 振り返り

1から7のステップを順にクリアしていくことで、
テーマを多角的に考える(発散的思考)、
問いを絞り込む(収束的思考)、
問いを通じて自分自身を俯瞰する(メタ認知的思考)

プロセスを学ぶことができるというわけです。


たった3つのルール

QFTにはゆるやかなルールがあります。(本書 p.87-89)
  • 話し合いはしない
  • 質問を評価しない
  • 質問に答えない

ステップ2でルールの妥当性を参加者に先に話し合ってもらうこと、
これによってファシリ、参加者、全ての人の立場関係がある程度均されるといいます。
(これ、すごく大事ですよね!)

これは一人で行う際にも重要なことだと思います。
「なんで?」を問う段階でポツポツと考えは浮かんでくるけど
どうせどうしようもないし、と書き留めずに次に進んじゃうことありませんか?
そうではなく、まずは思いつくままに質問を書き出してみる。手を止めない。
ここにQFTの一つの刺激があるのだと思います。


質問づくりはアート(創造)であり、科学でもある

アートというと美術的な何かを思い浮かべますが、
そもそもの語源は「技巧、技術」です。
余談ですが、アートの邦訳としてもっとも出てくる日本語の「芸術」も、
広辞苑では「技芸、学術」が第一義に挙げられており、
必ずしも「美的な何か」が含意される言葉ではないのです。
また日本語で「美術」をイメージするようなものに対する
訳語としてのフランス語はbeaux artsです。
つまり美術とは「美」に関する「アート=技術」なのであって、
アートのみで美術館に並ぶ作品を思い浮かべるのは本来的な意味からはずれているのです。

余談はさておき、つまるところ、
質問づくりは「技術」なのである。と筆者はそう断言します。
才能ではなく、訓練して習得する職人技に近いものだということです。
さらに科学的でもあって、法則に従って実践して結果を得るという
因果関係がはっきりとしたものであるということなのです。

ネタバレはしませんが、個人的に興味深かった点を
1点だけ紹介して本記事を終わりにしたいと思います。
技術であるということは、何かしらのコツがあるはずですね。
本書が言いたいのは、質問をやみくもにつくりまくれば良いということではありません。

上で紹介した7つのステップの中で、個人的にもっとも「アート」に近しいと思うのは
ステップ4、チームで出し合った大量の質問を吟味する、です。
吟味とは、具体的に質問をいくつかの種類に振り分けてごらん、ということです。
しかも質問はたったの2種類に振り分ければいいと言います。

振り分けるために用いる判断基準は
「こんなこと?」と思うくらいに単純です。
しかし、質問づくりにおいて最も象徴的な「アート」だと思います。
このアートに基づくプロセスがなければ質問づくりの科学性もなくなってしまうでしょう。

今日の文庫紹介は以上です!
実はまだこの本、LALA文庫には登録されていません(追加予定)。
お茶大図書館には蔵書がありますので、興味のある方、ぜひ読んでみてください。

QFT.png

読んでみて考えたこと、わからなかったことを誰かと考えてみたいという方
図書館1FのLALAデスクでお待ちしています!

#萌子 #LALA文庫

『博士になったらどう生きる?』– 78名が語るキャリアパス-

20200124日(金)
こんにちは。火曜(11-13時) と金曜(13-15時) 担当の林です。

今年度も残すところ僅かになりましたね。
寒い日々が続きますが、グローバルラーニングコモンズが連日にぎわっている印象です

さて、今回ご紹介するのは、こちらの本です 


『博士になったらどう生きる?』-78名が語るキャリアパス-

LALA文庫 [ H8 ] / 請求番号 [ 377.5/H17 ]
栗田佳代子 [監修]
吉田塁・堀内多恵 [編]



現在大学院生の皆さんの中には、なかなか重いタイトルのように感じる方もいらっしゃるかもしれません。
キャリア形成や研究の進め方は、分野や個人によって大きくことなるものなので、丸々参考になる例、という例はまず無いと言えます。

そんな中で、本書の強みは何と言っても、豊富な具体例!
以下の分野から、総勢75名(+3名)の、年齢層もキャリアも様々な先輩達の体験談を読むことが出来ます。


人文科学(美術史学/哲学/臨床心理学)
社会科学(法学/経営学/社会心理学/地域研究)
理学(植物学/生物物理学)
工学(建築学/知能機会情報学)
農学(農学)
保健(医学・薬学/公衆衛生学)
教育(教育学)



私の場合は、ここに乗っていない音楽学ですが、比較的近しい分野である「美術史学」や「哲学」の体験談は、参考になることが多く書かれていました。

本書は二部構成になっており、上記のような体験談が載っているのは、第二部です。
そして個人的に最も興味深かったのは、第一部の内容の1つ「研究者のライフプラン」という章です。

この章では、女性研究者の多くが直面する、結婚と妊娠をテーマに、様々なデータと実際の女性研究者のライフプラン例を、並行して示しています。


78人の体験談には、デリケート且つシビアな論点もたくさん含まれています。
それでも、研究者として自分の納得できるキャリアを築いている先輩が懸命に伝えようとしている、後輩への応援の気持ちが伝わってくる文章に、私は励まされました

1人分の体験談は見開き2ページで読めてしまいます。
興味のある方は、まずLALA文庫コーナーまで覗きに来てくださいね。


#LALA文庫

音楽のイメージをアカデミックに表現する!『音楽の文章セミナー』

20191227日(金)
こんにちは!
火曜と金曜担当、音楽学専門の林です(音楽学って?という方はぜひ自己紹介記事に飛んでみてくださいね

2019年最後のブログは、音楽を扱った研究テーマの人にぜひ読んで頂きたい、この本の紹介です!


LALA文庫:B13
『音楽の文章セミナー プログラム・ノートから論文まで』
久保田慶一 [著]
音楽之友社


以前ご紹介した、LALA文庫:C14 『音楽の文章術 Writing about Music』 がどちらかと言えば修論以上の学生さん必読の内容だとすると、本書はより、卒論や初めてのレポートに臨む方にオススメです。


オススメするポイント
「何から手をつければ良い?」ゼロからの出発に心強い構成


 音楽について文章を書くということは、大学までの一般的な教育では行われていません。
 音楽の授業で経験されるようなレポートは、「感想文」であり、大学生以上に求められるアカデミックな文章とは異 なるものなのです。
 より正確に言うと、「音楽から得た自分のイメージや感情」を表すのが感想文だとすれば、「音楽そのものについて 説明する」のが、レポートや論文と言えるでしょう。

とは言え、初めて尽くしの執筆作業、どう行えば良いのか?と途方に暮れてしまいますよね。

そんな時に本書を手に取れるあなたはとてもラッキーです!

というのも、本書の構成は、


1. 音楽的リテラシーを身につける
(視点の見つけ方、情報の探し方・選び方、引用の仕方)

2. 音楽の文章表現を身につける
(主題、形式、和声、歌曲、オペラの説明の仕方)



となっています。
つまり、視点の見つけ方から、具体的な作品の説明の仕方までが時系列順に網羅されているのです。

特にありがたいのは、
「形式」や「和声」といった、音楽を専門にしてる学生なら一通り勉強はしているものの、受けてきた教育や能力によって、理解に差がある項目について、丁寧な解説があることです。



論文やレポートを書く作業において、案外もっとも時間をかけてしまうのが、「構成」や「言い回し」です。
指導の先生にはいちばん大切な「中身(自分の発想、発見など)」をじっくりみて頂くためにも、自分でクリアーにしておきたいですね!
もちろんLALAデスクへ相談にきて頂くのも、大歓迎です!!


あっと言う間に、今年も年の瀬ですね。
お正月はゆっくり体を休めて(修論提出予定のみなさま、追い込みは健康な体があってこそです!!)、また図書館でお会いしましょう

#林 #LALA文庫

忙しいけどちゃんと書きたい人のための卒論執筆伴走ガイド

20191220日(金)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

今回は新しくLALA文庫に追加された、村上紀夫『歴史学で卒業論文を書くために』(2019、創元社)【C23】を紹介します。LALA文庫のC「レポートや論文作成など、大学での学びに関するもの【上級】」の棚のほか、請求番号207/Mu43で一般図書の棚にもあります。

歴史学のみならず広く人文科学の分野で卒業論文を執筆しようとしている人にも役立ててもらえるよう一般化を心がけた」という本書、目論見通り歴史学の人(とくに日本史の人)に参考になることが詰まっていますが、それ以外の分野の人にも一読の価値があります。

全体で13章、中間地点に近い第5章が「夏期休暇の有効活用」です。もしもあなたが学部4年生のゴールデンウィーク前にこの本に出会うことができたら、そのすべてを活かすことができます(なんという幸運!)。あるいは大学のようなフォーマルな学びの場から離れてしばらく経ってから再び学部や院で学ぼうと考え始めたタイミングで手に取れば、その覚悟を決められるでしょう。

本書の丁寧な章立てから、論文執筆にかかわる作業手順の全貌と留意しておくべきポイントは、相当分かります。といっても本書に書かれていることのほとんどは、この本を手に取る人なら授業やゼミで指導教員や先輩たちから言われた覚えのあることばかりでしょう。じつのところ論文執筆にかんするアドバイスのほとんどは、何度も聞いたり見たりするなかで(場合によっては他人に伝えたり説いたりすらしていくうちに)自分自身の学びに浸透していき、卒論や修論を執筆する時期(学年)を迎えるものかもしれません。

内容の紹介に戻ると、第3章「論文の集め方と読み方」であげられているダメなやり方は、多くの学生がやりがちなことで(わたしも覚えがあります)、耳の痛い指摘です。

「一番ダメなのは、図書館で論文をいくつもコピーして読むのが面倒だからといって、とりあえずCiNiiを使って、手っ取り早くダウンロードできるものだけを選ぶこと。」(41)



そして論文集めの段階だけでもそこそこ「面倒」だからこそ、卒論については細かなアドバイス以前に第一に「早め早めに手を付け、作業を進める」(6) べきと言われ、そんなことは誰だって分かっていることではあります。しかしなかなかそうもいかない。だから…

「もし今が夏休みを過ぎていて、卒業論文が待ったなしの状況だったとしたら、とにかく目次を見て、今あなたに必要なところを読んでほしい。後半には、卒業論文の執筆作業をするにあたって必要な項目ごとに、できるだけ具体的に、何に注意して、どうすればいいかを書いている。困っていることがあれば、何かのヒントになるかもしれない。」(7)



という励ましを本書から得たのなら、このさい真に受けてしまいましょう。

面白いのは第12章「下書きが書けたら」で挙げられているようなよくあるミスや確認すべき点が、分野が異なればあり得るミスの種類も違うのに、なぜだかどこか見覚えや聞き覚えのあるものだということ。

「なぜか毎年必ずあるのが、片仮名のニと漢数字の二の打ち間違い。(略)こういう明らかなケアレスミスは減点対象である。うっかりミスにすぎないじゃないかと思うかもしれないが、たとえば「三分ニナリ」(三〇パーセントになる)と「三分二ナリ」(三分の二である)ではまったく意味が変わってくる。こうしたミスがあると、資料をちゃんと読まれているか疑われることになる。」(193-4)



卒論や修論は(他の人のためではなく)まず自分自身のためともよく言われます。きちんと調べて考えて、真面目に書けばボツにならない文章を書く機会は、じつはかなり得難いものです。卒業論文のテーマを決め、最後の一文まで書き上げ、締め切りに間に合うように印刷・製本して提出し、審査を受けるまで——長い道のりですが、この本はそうした過程のどの段階においても心強い味方になってくれるはずです。

#ジャニス #LALA文庫 #卒論