文献管理プログラム (Citation Managers) を使ってみましょう

20190617日(月)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。

今回は文献管理プログラムについてご紹介します。

レポートや論文を書くときは、直接引用した文献や、議論の根拠とした情報源がどこにあるのかを読者に分かるように書きます。今回ご紹介するのは、そうした情報を整理する助けとなるプログラムです。

■ 全体的な仕組み
文献管理プログラムは、自分だけにカスタマイズした文献情報のデータベースの1) 作成と 2) アクセスと 3) 利用を容易にしてくれるものです。

文献情報というのは一般書籍でいうと、タイトル、著者名、発行年、言語、出版社、発行された国・都市名、といったものです。こうした情報が数件程度であればいいのですが、大学生活を送っていくうちに、おそらくそれらは膨大な数になります。数が増えるだけならいいのですが、文献情報というのは本の形ではなく、論文はもちろんウェブサイトや公文書、映画や楽譜…と様々なかたちを取ることになる場合もあります。そうなってくると管理はいっそう難しくなります。

そこで個々人がFileMakerやMicrosoft Accessなどを使ってデータベースを構築してもいいのですが、執筆を前提とした文献などの情報管理に特化した多数のプログラムが全世界のモノを書く人たちのためにすでに用意されているのです。このように便利なものを使ってみない手はありません。

いずれのプログラムを使う場合でも、各管理組織はデータベースをインターネットからアクセス可能にしており、各ユーザが専用アカウントを使って、複数の端末から同一の(その都度最新の状態に更新された)データベースにアクセスできるように設定できるようになっています。つまり基本的な仕組みは小林さんが先日紹介されていたクラウドメモと同じです。

外出先のコンピュータを使うときはブラウザを使ってウェブサイトからアクセスし、個人所有のラップトップにはデスクトップ上にアプリケーションを常在させ、スマホ用のアプリが用意されていればそれを使う、ということができます。

■ 文献管理プログラムできること
文献管理プログラムと一口にいっても、無料・有料ともに膨大な種類があります。英語のウィキペディアでは様々なソフトの違いが比較されています。https://en.wikipedia.org/wiki/Comparison_of_reference_management_software

2019年6月現在、お茶大図書館ウェブサイトで紹介されているものは、RefWorks、 Mendeley、 EndNote です。
※RefWorksについて、お茶大では2019年9月で契約を中止することになっています。

わたし自身はずっとRefWorksを使ってきました。それに加えて、オフラインでも情報が管理できるものに切り替えよう思いZoteroというプログラムを使い始めたところです。

迷うほどの種類があるのですが、幸い(!)どのプログラムを選んでも、以下のことができます。
 ● 文献データベース (PubMedなどの論文データベースはもちろんOPACなど)から文献情報を入力すること
 ● 個々の文献情報をフォルダーやグループ別に分類・整理すること
 ● 文献情報に紐づけてPDFファイルを加えること
 ● Microsoft Word や同様の文書作成プログラムで様式 (styles) に合わせた文献一覧表を作成すること
 ● 自分自身のデータベースのすべて、もしくはその一部を、適切なアクセス制限を設けたうえで他のユーザと共有すること

そして何らかの事情でデータベースを移動させたり、使用するプログラムを変更したりする場合でも、たいていのプログラムは基本的な文献情報にかんして出し入れすることはそれほど難しくない作りになっています。なので気軽に使い始めてみましょう。

■ いつから使うの? −−リサーチを始めたらすぐに使い始めるのです!

論文を書く前には、調べ物をして記録を取りますよね。その時点から使い始めます。

このエントリーでは「男性性」についてレポートを書くことになった場合を考えていきます。まずは先生に勧められた『介護する息子たち』という本を探してみることにします。いま見たところ、お茶大図書館には電子版が、文京区の図書館には印刷版があるようです。

全国の大学図書館の蔵書を探せるCiNii Booksで検索すると2019年6月17日現在222館に所蔵されています。
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB23155914
こちらのページをみると、右下に「書き出し」というかたまりがあります。
  RefWorksに書き出し
  EndNoteに書き出し
  Mendeleyに書き出し
  Refer/BibIXで表示
  RISで表示
  BibTeXで表示
  TSVで表示
  ISBDで表示


読み込むプログラムに合わせて、これらのいずれかを使います。
RefWorksやEndNote、 Mendeleyは該当のボタンをクリックすればいいので、かんたんですね。ZoteroならRIS形式が読み込めるので、それをデスクトップ・アプリに取り込むことができます(もしくはウェブクリップ機能を使って取り込みます)。

この作業を開始する(該当ボタンをクリックする)前に、RefWorksならウェブサイトからログインしたり、Zoteroならデスクトップ・アプリを立ち上げておいたりすると、スムーズに作業ができるはずです。

どの文献管理プログラムでも、書籍や論文以外のリソースについて情報を入力することができます。このとき最終的な出力形式で必要な情報を不足なく入れておくことが大事です。また文献情報と合わせて個人ノートを書いておくこともできます。

EvernoteやDropboxをすでに利用しているのであれば、そうしたデータベースの情報と連携させておくこともできます(たとえばEvernoteのノートから共有リンクを生成して、それを文献管理プログラムの該当資料エントリーのフィールドにコピペしておくなど)。

文献情報は自動で入力する以外にも、手動で一つずつ入力することもできます。

■ あとで探しやすいように分類する
文献情報を取り込むのは大変簡単なので、文献管理プログラムのデータベースはなんでも入れがちになりますが、最初の入力時点で、フォルダ分けやタグ付けで、分類のところまでやっておくと、あとの作業が楽になります。

フォルダやタグは執筆課題ごとで分けておくのがおすすめです(出力時の手間を省くため)。具体的な課題が定まる前段階なら、テーマごとでも問題ありません。

いざとなれば全部検索できるとはいえ、未来の自分のために、分類しておく手間を最初は惜しまないのがコツです。

文献管理プログラムの各エントリーにはアブストラクトやノートのフィールドがあるので、資料の要約やキーワードを入れておくのも便利です。

■ 文献情報を出力する
必要な文献情報がすべて文献管理プログラムに入力できたら、それを出力することができます。

各プログラムにはMS Wordへの追加機能(アドオン)が用意されていますので、それを利用して引用参照していくことはもちろん、書き上げた論文の最後につける文献リストを作ることができます。ただし慣れないうちはとくに、要求されたスタイルに合わせた文献リストを作成する作業を提出締め切りギリギリにしてはいけません(経験者)。

ということで、最初の一件を入力したら、そのエントリーを選んで、出力の機能を一度試してみましょう。また、文献購読や勉強会などで報告担当者になったときに、レジュメの冒頭におく文献の基礎情報を、表記の確認を兼ね、文献管理プログラムからスタイルを指定して出力してみるのもおすすめです。

■ 使い方がわからないときは…
共通機能があるとはいえ、それぞれの文献管理プログラムには得意・不得意があります。各プログラムの運営組織や大学図書館、ユーザによって、便利な機能が紹介されています。

とくに初めて使うときには、画面の遷移をそのまま写している動画での解説が分かりやすいです。たとえばこういう動画があります(音がなくても理解できます・まどろっこしい部分や不必要な部分は飛ばしても大丈夫です)。
  ● Mendeley文献情報を集める編 オンライン講習会
    https://www.youtube.com/watch?v=Qx8vzA0LdJc
  ● RefWorks(Legacy Version)の使い方 - 基本から実践まで
    https://www.youtube.com/watch?v=htEVdDVw6_k
  ● Learn Zotero: Step by step tutorial
    https://www.youtube.com/watch?v=HwCL3qozuB4
  ● EndNoteの基本的な使い方
    https://www.youtube.com/watch?v=j9ybysg7nZU

文献管理プログラムを使うと、他の人と文献情報を共有することも容易にできます。グループ課題や共同研究に取り組むとき、同じ資料を参照したり、自分が見つけた資料を仲間に紹介したりするときに、文献情報ごと共有することができます。また同じプログラムを利用している仲間と情報交換できると心強いものです。周囲でこうしたプログラムを使っている人がいないか(身近にいなければLALAデスクで聞いてみてください)、使ったことのある人がいれば感想も合わせて、聞いてみましょう。

#ジャニス #文献管理

《学生協働WSレポート①》「ジャパンナレッジ」の使い方

20181004日(木)
寒暖差や風雨に振り回されっぱなしの今日この頃ですが、皆様お変わりありませんでしょうか?

これから、夏休み中に、附属図書館グローバルラーニングコモンズで開催された「学生協働ワークショップin東京2018」について書いていきたいと思います!

突然ですが、皆様は「協働」って言葉、聞いたことがありますか?
私はLALAになるまであんまりよく知りませんでした\(^o^)/

「ジャパンナレッジ」を引いてみますね!

wskijigazou1.png


ピンクで囲んである、「データベース・電子リソース一覧」をクリックします。
次の画面では、「ものごとを調べる」を選びましょう。


「ジャパンナレッジ」は、続いて表示される選択肢の先頭にあります。説明を引用してみましょう。

百科事典、辞書を中心とした出版各社の50以上の知識・情報源を一括検索できます。多くのコンテンツで情報更新が定期的に行なわれており、最新情報を利用できます。
主な収録コンテンツ:『日本大百科全書(ニッポニカ)』『日本国語大辞典』『大辞泉』『国史大辞典』『日本歴史地名大系』『ランダムハウス英和大辞展』『東洋文庫』『会社四季報』など。

【DB・電子リソース一覧】お茶の水女子大学附属図書館、2018年10月4日参照

一言でまとめると、大変便利です。

学内の回線につながっている端末であれば使用可能ですが、注意点が一つあります。
それは、学内で同時に2名までしか使用できないことです。

後で述べますが、利用のためにはログインが必要です。
つまり、ログインして使って、ログアウトを忘れて終わってしまうと、一人分利用ができなくなってしまう……ということですね○| ̄|_
その点はお気をつけてください。
さて、ログインしましょう。

「学校・研究機関でのご利用」となっていることを確認してくださいね。

……ここまで書いたところでログインしようとしたら、利用できるアクセス数を超えていますと言われてしまったので、出直します!
まだ使ったことのない皆様は、学内の人口密度が低い時間帯を見計らってぜひ試してみてくださいね。

さて、話題がずれまくってしまったので、「辞典・百科事典の検索サービス - Weblio辞書」で、「協働」(三省堂『大辞林』から)を引いて一旦締めます。

① 同じ目的のために、協力して働くこと。
② 「相互作用① 」に同じ。

「協働(きょうどう)とは - 協働の読み方・全国NPO法人 Weblio辞書」、10月4日参照

図書館と「協働」って、どんなふうに関わっていると思いますか?

という丸投げの質問をして、次回に続きます。

#みあ

Google Scholarの利用法(2):参考文献の作成に使ってみる

20171019日(木)
前回に引き続き「Google Scholarの利用法」です。今回は論文末に参考文献についてです。
Google Scholarの検索結果を見ると

スクリーンショット 2017-10-12 14.55.32

上の図にもあるように「」をクリックすると

スクリーンショット 2017-10-12 15.15.38

このように3つの書式で論文の書誌情報が表示されますので、参考文献リストを作成する時にここから情報を入手することができます。

以下の3つの書式で表示されています。
MLA Style(米国現代語学文学協会(Modern Language Association of America)が規定しているスタイル)
 →著者名.”論文タイトル”. 雑誌名(書体はイタリック)巻号 (出版年): ページ.

APA Style(米国心理学協会(The American Psychological Association)が規定しているスタイル)
 →著者名. (出版年).論文タイトル. 雑誌名(書体はイタリック), 巻号, ページ.

ISO690 Style(国際標準化機構 (International Standard Organization)が規定しているスタイル)
 →著者名.論文タイトル. 雑誌名(書体はイタリック),出版年,巻号: ページ.

微妙に出版年の場所や、ピリオド「.」、コンマ「,」、コロン「:」の使い方が違っているのがわかると思います。

マーヤさんの「引用・参考文献リストの書き方」に参考文献リストに必要な書誌情報と書式について書かれていますので、それも参考にしてみてください。

参考文献の形式は専攻分野や雑誌によって異なるので、雑誌に投稿する場合は執筆要項をよく読んでおくことが重要です。特に参考文献の書式が決められていない場合は、自分の参考文献リストの中で統一する必要があります。

RefWorksのような文献管理ツールを使う方法もありますが、データベースソフトで参考文献のデータベースを作成しておくのも良いかもしれません。

LALA文庫(B12:図書館請求記号816/W46)にある『大学生のための論文・レポートの論理的な書き方 / 渡邊淳子著』研究社(2015)の83〜87ページも参考にしてみてください。貸出中になっていても、この本は電子ブック(利用期限:2017/11/17←ただし期限付き!!)でも読めます。

#情報検索 #後藤

Google Scholarの利用法(1):論文を集める

20171014日(土)
Google Scholar」を利用したことがありますか?日常的にインターネットのGoogleで調べたいことを検索することは多々あると思いますが、研究論文を書く際には、Googleよりも学術的なことに特化した「Google Scholar」を利用することをお勧めします。

「Google Scholar」の検索窓にある「巨人の肩の上に立つ」は、どんな研究でも先人の研究蓄積の上に成り立っているという意味です。論文を書くにあたって、その研究テーマについての先行研究を集めて、それらの研究から新たな知見を見出すことが重要になると思います。

先行研究論文の収集方法については、このLALA Tipsの過去記事にもありますので参考にしてみてくださいね。
キーワードについて(2017/5/22)
Ochanomizu Searchを利用してみてね! (2017/5/30)
データベース「Scopus」について(2017/6/16)


まずは収集した論文の中で、読んでみて一番興味深かったものを見てみましょう。
すると学術論文には「」(脚注や後注)と「参考文献」が大体ついています。
「注」には、論文の中に書かれていることの典拠や論拠が示されています。「注」があることによって、その内容が著者の独りよがりではないことがわかります。
つまり注がない場合は、どうしてそういうことが言えるのか根拠不明になってしまいます。
「注」がない文章は、あまり学術的ではないと言えるでしょう。

この「注」にある論文を探して読んでみると、さらにその論文にも「注」や「参考文献」が載っていて、またそれも自分の研究テーマに関係がありそうだったら、探して集める必要があります。
こうして芋づる式に論文が集まってきますが、これを「Google Scholar」を利用することで、多少は手間が省ける場合があります。

「Google Scholar」での検索式は以前マーヤさんが紹介してくださった記事を参照してください。検索式にはAND(AとBの両方を含む)、OR(AかBのどちらかを含む)、NOT(Aは含むがBは含まない)、フレーズ(完全一致)があります。
例えば「gender sports」という単語入れて検索すると以下のような結果が表示されます。

Google Scholar検索結果画面

検索結果の左側のメニューで論文の発表時期や言語を指定することも可能です。
場合によっては、論文の全文もしくは要旨へのリンクが表示されるのでとても便利です。

また、検索する際には論文のタイトル中の用語からの検索だけではなく、常日頃から自分が関心があるテーマの「関連用語」を集めてメモしておいて、論文検索に役立てることもお勧めです。

いろいろ試して利用してみてください。

#情報検索 #後藤

文献カードでの整理法

20170803日(木)
 いよいよ長い夏休みが近づいてきました。
普段、授業に追われて、なかなできない趣味の読書をしたり、読まなきゃならないのに”積ん読”になってしまっている本をぞんぶんに時間をかけて読んだりできる時です!

さて研究テーマが決まって、情報を検索して文献をそれなりに集めて、さてこれをどうしようとなる場合もあるのではないでしょうか?

以前、ちゃちゃさんが「先行文献の整理法」で文献カードについて紹介していましたが、具体的に「文献カード」ってどういうものなのでしょうか?と質問がありましたので、ここで私なりの「文献カード」を紹介したいと思います。

文献はレポートや論文を書くときに、注に文献タイトルとページを入れたり、論文末の参考文献リストに入れたりすることがあるでしょうから、書誌情報(著者名、本または雑誌のタイトル名、論文の場合は掲載されている本または雑誌名、雑誌の場合は巻号、出版社、出版年、ページ 等)は記録しておかないと、後でもう一度調べ直すことになります。書誌情報に加えて、内容、読んだ時の雑感をメモしておくと便利です。

■電子媒体のカード
(1)RefWorksなどのアプリを利用する方法
LALA文庫の本棚にRefWorksのマニュアルがありますので、ご覧ください。図書館のサイト(HOME > 学習・研究サポート > 文献管理ツール)からもRefWorksのサイトに行くことができます。

(2)Excelなどの表計算やデータベースのアプリを利用する方法

下で紹介する紙の文献カードの電子版をファイルにするようなことなのですが、電子ファイルの利点は、とりあえずで入力したデータを、あとから著者名順や出版年順、テーマ分類順にソートできるという点と、調べたい言葉で検索できるという点です。

■紙の文献カード
文具店でいろいろな大きさのカードが売られていますが、たくさん記入したいのならばA5のカード、最低限の書誌情報が入ればいいのならばA6でもいいかもしれません。カードの左側に書誌情報と内容、右側に自分なりのメモを書きます。
文献カード
著者名をカードの頭に出したのは、カードを著者名順に管理することを想定しているからです。場合によっては、先にテーマ分類で仕分けして、その中で著者名順に並べると、後で見やすくなると思います。またその文献の中で気になる言葉や文章があったら、カードの裏にメモ(掲載されているページも)しておいてもよいかもしれません。

紙のカードの長所は、パソコンやタブレットがなくても(例えば停電しても)利用できる点と、床にカードを並べてみて、あーでもないこーでもないと考えられる点でしょうか。

いろいろ試してみて、自分なりの文献カード整理法を開発してみてください。

では、楽しい夏休みをお過ごしください\(^o^)/。

#情報検索 #後藤