LALAセミナー「コロナ禍でもできる社会調査」#後半

20210422日(木)
こんにちは、前回に引き続き2月10日に開催したLALAセミナーのレポートです。
本セミナーは「コロナ禍でもできる社会調査」と題して、
こんな状況ではあるけれども、何かできることはないか?
を一緒に考えていこうという趣旨で開催しました。

当日は
1. できなくなったこと
2. 何と替えられるか
3. 長所&短所
4. 特別に配慮すべきこと
の順番にお話ししました。

そしてレポート#前半では3番までを書きました。
なので#後半では4番以降について振り返っていきます。



4. 特別に配慮すべきこと
ここでは準備編と実践編の2つに分けて確認しました。

準備編
・同意書にはオンライン実施ならではの確認項目を入れる
・協力者はどこでオンラインツールを使うのか、確認する
・ネットワーク回線の状況について確認する(場合によってはビデオオフへ)
・調査は知っている人から初めてスノーボーリング
・代替手段を常に用意しておく

さて、調査を行うためにはまず、調査に協力してくださる方に向けた
同意書」を準備し、同意が得られなければなりません。
同意書の書き方は、調査に関するさまざまな参考書が丁寧に説明しています。
が、オンラインでのインタビュー形式のものについてはおそらくほぼないでしょう。

ここで想定されるのは協力者のビデオのオン・オフであったり、
調査側がどういった環境下でオンラインにいるのか、
(協力者の話が外に漏れる心配がないことの保証)
録音をする場合の特別な配慮について、
(zoomの機能を使うのか、外部の機器を使うのか、その内容が流出しないための措置の説明...etc.)
などがあるでしょう。

対面と違って調査側がその場をコントロールしづらい
ということは前半でお話ししましたが
それは協力してくださる方にとっても同じです。
いつも以上に不安を感じる方もいるかもしれない中で、
できる限りの配慮を心がけた同意書を作成することが求められます。

また、調査を始めるにあたって、誰から話を聞くのか
をあらかじめ想定し、設定しておくことが重要です。
オンラインで実施する場合は、
特に協力者のプライバシーの確保や関係性の構築が困難です。
そのため元から知っている方から始めていくのが理想です。
その方からさらに知り合いを紹介してもらって、という方法をとれば
2人目の方も、全く知らない人よりは、信頼している〜さんからの紹介であれば
と、少しは安心できる材料になるはずです。

実践編
・関係性を築いた上で話せること、には慎重に
・zoom用のミーティングルームは協力者ごとに用意、ID/PWも個別に
・録音は外部の機能を使って行う
・記録用の音声/動画は鍵付きのUSBに入れ厳重に保管

オンラインでの打ち合わせや会議が増えることで一つの変化に気がつきました。
確実にオンライン上での会話が上手くなってきた。
なんなら気持ちの緩みさえ出始めている様な気がします。
簡単さからついつい相手への配慮が疎かになることも。

オンライン通話はPCや携帯の電源をオンにすれば、
いつでもどこでも会話がスタートできる非常に便利な方法です。
それでいてこれまでの電話とも異なって
会えないからその代替手段として「会う」ことが目的されています。
しかし一度立ち止まって考えてみてください。
実際には会えていないんです。

表情やその場の空気感というものまではうまく伝えてくれません。
これだけでも配慮の性質は異なっていて、
私たちの中で更新していかなければならないのに
この’会っている様な感覚’のまま
オンラインでしか「会った」ことがない人と交流していくのは
まだまだ付き合い方を考えなければならないことです。

このことは当然調査中にも気をつけなければならない点です。
外に出て、いろんな人と関わる中で、話が徐々に聞ける様になる
これが現実世界です。が、
パッと画面上に誰か人が現れると、
それだけのステップが本来あったはずのことを忘れがちです。
そういう意味で「関係性を築いた上で話せること、には慎重に
ということを調査中、念頭に置くことが求められます。

レポート#後半は1項目だけだった割には長くなってしまいました。
まだまだ周りにオンライン調査を経験した人は極めて少ないでしょう。
私自身実施したことはなく、周りにもいません。
ですが、今回セミナーで考えてきたことを振り返ると
コロナ禍では聞き取り調査など一切できない、、
と悲しくなるだけでなくてもいい、という気はしてきました。

今後も継続して新しい形の調査について皆さんと一緒に考えていければと思います(=゚ω゚)ノ
次回は電子リソースの使い方について記事を書きます!

#萌子 #セミナー

LALAセミナー「コロナ禍でもできる社会調査」#前半

20210420日(火)
みなさん、こんにちは。
LALAの萌子です。

今日はタイトルにもある通り、前年度に行ったLALAセミナーのレポートです。

2月10日(木)に「コロナ禍でもできる社会調査」と題したセミナーを開き、
当日は2名の方に参加いただきました。
セミナーを通じて私が考えたかったのは、
コロナ禍でどうやって社会調査をしていこうか?ということです。

当日はオンライン(ZOOM)で開催しました。
ビデオのオン・オフは参加者の希望に任せ、
発言する時のみマイクをオンにしてもらうようにお願いしました。
質疑応答の時間をどんと設けるというよりかは
参加者が少なかったこともあって
急遽、発言したい人が発言したい時にするスタイルに変更しました。

私自身TAをしている中で、あるいは同じ研究室の人の体験談から、
泊まりがけでの調査が中止されたり、、
調査ありきで立てていた研究計画をもう一度考え直さなくなったり、、
様々な壁に当たって悩んでいる方を見てきました。

個人的な話で言えば、私は海外をフィールドとしているのですが、
今年度2回予定していた海外調査はどれも延期(実質中止)になり
私自身も悩みが絶えない一年でした。

LALAは、こうした学業の悩みを一緒に考えていく、
そんな存在だと思っています。
この状況下で、まだ明確な解決策はないかもしれませんが、
それでも、少しでも考えが進んだり、クリアになる手助けができれば、
と思い今回はこのようなテーマでセミナーをしようと考えました。

これはあくまで今後卒論などのために調査を予定している
学部生をメインに想定しているので、物足りないと思う方もいると思います。
もし何か意見やコメントがあれば是非是非書き込んで共有してください。

当日の内容です。
1. できなくなったこと
2. 何と替えられるか
3. 長所&短所
4. 特別に配慮すべきこと
この記事では上から順番に振り返っていきます。



1. できなくなったこと
すでに触れましたが、新型コロナの感染拡大とともに、
私たちにはできなくなったことがあります。
同じことがもちろん調査においても起こりました。

調査といってもさまざまな手法があります。
大きく分ければ、2つ。
量的なもの(量を多くとってマクロに分析する)
質的なもの(量は少ないが一つ一つのケースを深く、ミクロに分析する)

今回私が想定しているのは後者の方で、
そこでは人との繋がりや関係性といったものが重要になってきます。
・聞き取り調査・・・対面での実施が難しい
・フィールド調査・・・訪問が難しい
・参与観察・・・上であげた理由のほかに、団体自体の活動が中止している場合も

もちろんこれらはとても残念な話ですが、一方、嘆いているだけにもいきません。
そこで私たちは上のような手段で掬い取れていた現場の声をどのような代替手段で引き続きできるのか、を考える必要があります。



⒉ 何と替えられるか
パッと思いつくようなところでいえば・・・
・電話
・郵便/メール
・オンライン
ですが、今回はオンラインツールに限定します。
できるだけフィールドワークの形と近づけたいからです。

さて、ここで問題が発生します。
電話や郵便、メールを調査の中で使用することはこれまでもありました。
それについて言及している調査手法の参考書なんかもあります。
ですが、オンラインとなると実は案外なかったりします。
もちろん、量的なアンケートなんかはグーグルフォームをはじめ
オンラインアンケートという形で多くの人が活用してきていますが。

そこでとりあえず、
オンラインでできる質的調査の長所と短所について考えてみることにします。
相手のことをよく知らないとうまい使い方も分かりません。

長所
・地理的な制約がなくなる
・資料等の共有が楽になる
・足労、交通費といった(協力者側の)負担が軽減する
・対面よりも話しやすい内容もある

短所
・協力者に出会いにくい
・ラポールの構築が難しい
・プライバシーを守る準備がしずらい
・機材が必要になる

オンライン調査の最大の魅力はなんといっても
地理的な制約がなくなる」ということではないでしょうか。
それは3つ目の協力者への負担ともつながります。

例えば私はフランスへ調査しにいくのに
往復の渡航費だけで何十万というお金が必要になります。
極端な話、それが全てオンラインでできるのであれば0円です。
こんないい話ない、と思うかもしれません。

しかし、オンラインツールができてから十何年、
その方法を取らず研究者の方々が現地へ赴いていたのには
それなりの理由があります。
それが短所にあげたような点です。

対面よりも話しやすい内容がある」点については
うまく活用ができるのではないか、と考えています。
私の場合で言えば、性的指向や性自認を理由に難民申請を行う人が対象ですが
それを理由に迫害を受けてきた人にとって、簡単に口に出せるストーリーではありません。
そんな時、オンラインツールであればビデオをオフにしても対話ができる。

ただしこの点も要注意なのが短所にもある
プライバシーを守る準備がしづらい」点です。
対面であればこちら側から、会う場所を確保できます。
その空間は調査者によってコントロールできます。
例えば一室を借りて行う場合、扉が開いていれば私が閉めることができます。

しかしオンラインとなるとそれが難しくなります。
会話をしている相手が一体どのような空間にいるのか想像がつきづらいです。
もしかしたら行く場所がなくて、自分の部屋もなくて
家族と共同で使うリビングで対応してくれているかもしれない。
そうなったら、協力したいと思ってくれた気持ちとは裏腹に
誰かに聞かれている意識から、深い話が聞けないでしょう。

さて、簡単に長所と短所を出してみました。
はじめよりはオンライン調査という相手について
わかってきたような感じがします。
最後に、じゃあ特別な配慮って何が必要になるんだろう?
ということについてお話をしました。

が、かなり記事が長くなってしまったので
ここからは後半編として木曜日にブログを書きます。
お楽しみに〜〜

今年度どういったLALAセミナーを開催してほしいか
アイデアがあったらぜひぜひLALAまでお願いします!

#萌子 #セミナー