初めましてのご挨拶と研究の紹介⑵〜これまでの研究と行き詰った時の打開策〜

20181017日(水)
こんにちは!LALAの木村です。
もうすっかり涼しくなり、過ごしやすい季節となりましたね。
芸術の秋、スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋…などなどたくさんの楽しみ方がある
予定に追われがちな季節でもありますが(笑)、心にはゆとりを持ちつつめいっぱい満喫していきたいですね。

さて、大分時期が開いてしまいましたが今日は前回の続きで、私の研究について少し具体的にご紹介したいと思います。

前回の記事で「音楽学」の多様な様相について簡単に書かせていただきましたが、
私の研究は、その中では「作品研究」にあたります。
一口に「作品研究」と言っても、時代で絞ったり(バロック、古典派、ロマン派、etc…)、編成や形式で絞ったり(オーケストラ作品、オペラ、バレエ音楽、ピアノ独奏、室内楽、etc…)と、これまた無限にやり方があるのですが、
私の場合はとある一人の「作曲家」に絞って作品研究を行なっています。

その作曲家とは、バルトーク・ベーラBartók Béla(1881-1945)です!

「誰……?」という方がほとんどかと思いますが、
バルトークは20世紀前半のハンガリーで大活躍した音楽家です。

彼はもちろんクラシック音楽の作曲家なのですが、それまでの作曲家にはあまり見られない意外な側面を持っています。それは、「民俗音楽」の研究者としての一面です。
彼は、母国ハンガリーやその周辺地域(ルーマニアやスロヴァキア)の農村地域に残る「民俗音楽」をフィールドワークによって収集し、それらを研究する活動も行なっていました。
そして民俗音楽研究から得た知見を、自身の作曲活動に積極的に取り入れていったのです。
農村で収集した民俗音楽の旋律をそのまま用いて、ピアノやヴァイオリンの作品に「編曲」したり、
民俗音楽に特徴的な音楽的要素(例えば、リズムや音階、音楽の構成など…)を抽出し、民俗音楽的なモチーフを自作したりと、
実にさまざまなレベルで自身の作品に民俗音楽を組み込んでいきました。

また一方で、彼自身がピアニストで「演奏家」であり(弱冠10歳にしてソロリサイタルを開くなど、少年期より並々ならぬ才能を発揮していました)、さらに子ども向けのものを中心にピアノ学習の作品を複数残すなど「教育者」としての一面も見せています。

このように、バルトークは色々な“”を持つ作曲家なのです。
私は、これら多様な“顔”を手掛かりとして、彼の作品が持つ独自の魅力を紐解くべく、作品分析を主軸に研究を進めています。


…と、上記のようなことを卒論時代から約4年間続けているのですが、
音楽ないし楽譜というのは、数多の要素が一瞬のうちに統合されているもの。
論文としてひとつひとつ“言葉”に起こしていくことは、私にとっていつでも至難のわざでした(今現在も変わらずです)。
さらに、先述のようにバルトークの作品ではさまざまな側面が複雑に絡み合っているため、それらの“関係性”を描き出していくことも、非常に頭の熱くなる作業です。
(そして、このように複雑な関係性を論述していくという作業は、音楽に限らず他分野でも大いにあることだと思います)

では、そんなとき。作業や思考が滞ってしまった時。どのように打破したらよいか。

最後に、これまでの経験の中で行き詰った時に効果的だった打開策を1つ、簡単にご紹介します。

【他人に見せる】
特に“思考”が滞ってしまい、「どこからどう書いたらいいのか分からんー!」という状態になっている時には、根気よく他人に見せ続けることがかなり助けになりました。
他人に見せるとなると、「ちゃんとしたものを書かねば…」「ちゃんと順序立てて整えたものを見せなければ…」と力が入ってしまい、余計に書けなくなってしまうことがよくあります。
しかし!そういう時こそ“出力”するのです!
頭の中が混乱した、バラバラで支離滅裂な状態で良いのです。とにかくできる所から、思いついた所から、ひたすら文章化していくのです。
私の場合は、定期的に指導教員の先生に個人的な面談をお願いし、どんなに仕上がっていなくても、どんなに書けていなくても、とにかく何かを持って何かを相談しに行く、ということをひたすら続けました。
もちろん、自分の出来の悪さや頭の悪さを惜しげもなく晒していくスタイルですので、そのまま消えてしまいたいくらい恥ずかしい思いもたくさんしましたが(先生方には本当にたくさんご迷惑をおかけしました…汗)、
他人から意見をもらうことで、自分の研究や思考をかなり客観的に見ることができるようになります。視点がガラッと切り替えられます。
体感的には、面談1時間で得られるものは、自分一人で一週間考え込んでも進まないくらいのものです。
「先生方に見せるのには気が引ける…」という場合には、お友達や先輩・後輩(あえて異なる学科の人たちでも良いかもしれません)に見てもらうのでもよいですし、
もちろん、 LALAを訪れていただくのも大歓迎です!
客観的に視点を切り替えられる以外にも、新しい発見や気づきをたくさん得られたりします。
定期的に、半ば強制的に客観的な視点を吹き込んで、風通しをよくすることで、少しずつ“言語化”の歩みを良い方に進めていけるのではないかと思います。


とーっても長くなってしまいましたが、私の研究とこれまでの経験から、少しだけお話ししました。
何かの参考にとまでは言わずとも、「へー、そういう世界があるんだな」と、ちょっとした息抜きにでもなってくれていれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

#木村