齋藤孝『だれでも書ける最高の読書感想文』(LALA文庫A19)のご紹介

20190124日(木)
lalaa19
LALA文庫A19
(LALA文庫のみの所蔵となります。館内でお読みください。)

大学生以上の皆様にとって、「読書感想文」ってどのようなものでしょうか?
「過去の遺物」
「もうその段階は卒業した」
「書くのが楽しかった。いい思い出」
「書くのがしんどかった。つらい思い出」
ぱっと想像するに、こんな感じで、とにかく「過去」のカテゴリに入っているのではないのかな〜と思います。

確かに、「読書感想文」は、作文を勉強し始めた初歩的な段階の子供がメインの書き手になるものですが、
だからこそ、一度「卒業」した”大人”が向き合う価値をもつジャンルでもある
ということを、この本で再確認しました。

この本の文章自体は、実際に書き手となる、小学校高学年〜高校生くらいまでの層に語りかけるような、フランクな口調で書かれています。
だから、”大人”が読んでもとってもわかりやすいのです。

レポートや論文には、客観性が求められます。
文体も、小学校で習い始めた時は「です・ます」体だったものが、次第に「だ・である」体となり、どんどん堅くなっていきますね。
レポートや論文の文体となると、日常で目にする文章の「だ・である」体よりもかっちりしたスタイルが求められ、学生はそのスタイルや、スタイル構築に至るまでの論の立て方(調査の仕方や文献理解のためのスキル含む)を必死に真似して覚えようとすることになります。そうすると、だんだん言いたいことがわからなくなってきたり、言いたいことと違う方向に事態が動いてしまったり、調べるのが楽しくて楽しくて集めては見たけれど、絞りこめなくて進まなくなったり…なんてことが起こりがちです。

「読書感想文」も、テーマやスタイルがはっきりしたジャンルと言えるでしょう。
本の内容の説明を入れつつ、自分の内面を織り込み、説得力を持たせる努力をしなければならない「読書感想文」のスタイルは、小学生の段階では難しく感じられたはずです。求められているであろうスタイルに沿うように書いたために、作品に抱いていた本当の印象が書けなかった、という経験をした方も多いのではないでしょうか。

つまり、「読書感想文」を書くときに突き当たる壁は、”大人”になって、”客観的”な文章を書くときにも突き当たるものだと言えます。ですから、”大人”読者は、著者・齋藤先生のレクチャーを、自分の書いている文章(レポート、論文その他)に代入して捉えることができます。
文章を書く初歩的なトレーニングになるジャンルとしての「読書感想文」レクチャーは、文章全体に応用を利かせることが可能なのです。


著者の齋藤先生は、「読書感想文」を書く際に大事なこととして、特に以下の点を強調されているように見受けられます。

⭐︎能動的に、熱い気持ちを持って書こう。
⭐︎下手でもいいから、まじめに書こう。
⭐︎書くことを通して、自分の感じ方や考え方を知ろう。その他者との違いも掴もう。
⭐︎頭だけで書こうとしないこと。文章のリズムやしっくりくる表現を体で感じたり、他の人とコミュニケーションを取る・取るつもりで書いたりしよう。
⭐︎他者をイメージしよう。読み手や作者をイメージして、尊重することが大切。
⭐︎読書感想文を書くということは、国語の勉強というより、人とのコミュニケーション力を高めていくことだ。

以上はほぼ私が勝手にまとめたものですが、最後の太字のフレーズは本文からの引用です。
齋藤先生がこの本に込められたことは、これに集約されるのではないかなと、個人的には思います。
この一文は、全体の終わりのほうに出てきます。

この一文に至るまで、どのようなレクチャーが展開されていくのか。
ぜひ、本をお手にとって、直に齋藤先生自らの言葉の道筋を辿ってみてください。


#みあ