忙しいけどちゃんと書きたい人のための卒論執筆伴走ガイド
2019年12月20日(金)
こんにちは、月曜日11-13時と金曜日15-17時にLALAデスクにいます、ジェンダー社会科学専攻のジャニスです。
今回は新しくLALA文庫に追加された、村上紀夫『歴史学で卒業論文を書くために』(2019、創元社)【C23】を紹介します。LALA文庫のC「レポートや論文作成など、大学での学びに関するもの【上級】」の棚のほか、請求番号207/Mu43で一般図書の棚にもあります。
「歴史学のみならず広く人文科学の分野で卒業論文を執筆しようとしている人にも役立ててもらえるよう一般化を心がけた」という本書、目論見通り歴史学の人(とくに日本史の人)に参考になることが詰まっていますが、それ以外の分野の人にも一読の価値があります。
全体で13章、中間地点に近い第5章が「夏期休暇の有効活用」です。もしもあなたが学部4年生のゴールデンウィーク前にこの本に出会うことができたら、そのすべてを活かすことができます(なんという幸運!)。あるいは大学のようなフォーマルな学びの場から離れてしばらく経ってから再び学部や院で学ぼうと考え始めたタイミングで手に取れば、その覚悟を決められるでしょう。
本書の丁寧な章立てから、論文執筆にかかわる作業手順の全貌と留意しておくべきポイントは、相当分かります。といっても本書に書かれていることのほとんどは、この本を手に取る人なら授業やゼミで指導教員や先輩たちから言われた覚えのあることばかりでしょう。じつのところ論文執筆にかんするアドバイスのほとんどは、何度も聞いたり見たりするなかで(場合によっては他人に伝えたり説いたりすらしていくうちに)自分自身の学びに浸透していき、卒論や修論を執筆する時期(学年)を迎えるものかもしれません。
内容の紹介に戻ると、第3章「論文の集め方と読み方」であげられているダメなやり方は、多くの学生がやりがちなことで(わたしも覚えがあります)、耳の痛い指摘です。
そして論文集めの段階だけでもそこそこ「面倒」だからこそ、卒論については細かなアドバイス以前に第一に「早め早めに手を付け、作業を進める」(6) べきと言われ、そんなことは誰だって分かっていることではあります。しかしなかなかそうもいかない。だから…
という励ましを本書から得たのなら、このさい真に受けてしまいましょう。
面白いのは第12章「下書きが書けたら」で挙げられているようなよくあるミスや確認すべき点が、分野が異なればあり得るミスの種類も違うのに、なぜだかどこか見覚えや聞き覚えのあるものだということ。
卒論や修論は(他の人のためではなく)まず自分自身のためともよく言われます。きちんと調べて考えて、真面目に書けばボツにならない文章を書く機会は、じつはかなり得難いものです。卒業論文のテーマを決め、最後の一文まで書き上げ、締め切りに間に合うように印刷・製本して提出し、審査を受けるまで——長い道のりですが、この本はそうした過程のどの段階においても心強い味方になってくれるはずです。
#ジャニス #LALA文庫 #卒論
今回は新しくLALA文庫に追加された、村上紀夫『歴史学で卒業論文を書くために』(2019、創元社)【C23】を紹介します。LALA文庫のC「レポートや論文作成など、大学での学びに関するもの【上級】」の棚のほか、請求番号207/Mu43で一般図書の棚にもあります。
「歴史学のみならず広く人文科学の分野で卒業論文を執筆しようとしている人にも役立ててもらえるよう一般化を心がけた」という本書、目論見通り歴史学の人(とくに日本史の人)に参考になることが詰まっていますが、それ以外の分野の人にも一読の価値があります。
全体で13章、中間地点に近い第5章が「夏期休暇の有効活用」です。もしもあなたが学部4年生のゴールデンウィーク前にこの本に出会うことができたら、そのすべてを活かすことができます(なんという幸運!)。あるいは大学のようなフォーマルな学びの場から離れてしばらく経ってから再び学部や院で学ぼうと考え始めたタイミングで手に取れば、その覚悟を決められるでしょう。
本書の丁寧な章立てから、論文執筆にかかわる作業手順の全貌と留意しておくべきポイントは、相当分かります。といっても本書に書かれていることのほとんどは、この本を手に取る人なら授業やゼミで指導教員や先輩たちから言われた覚えのあることばかりでしょう。じつのところ論文執筆にかんするアドバイスのほとんどは、何度も聞いたり見たりするなかで(場合によっては他人に伝えたり説いたりすらしていくうちに)自分自身の学びに浸透していき、卒論や修論を執筆する時期(学年)を迎えるものかもしれません。
内容の紹介に戻ると、第3章「論文の集め方と読み方」であげられているダメなやり方は、多くの学生がやりがちなことで(わたしも覚えがあります)、耳の痛い指摘です。
「一番ダメなのは、図書館で論文をいくつもコピーして読むのが面倒だからといって、とりあえずCiNiiを使って、手っ取り早くダウンロードできるものだけを選ぶこと。」(41)
そして論文集めの段階だけでもそこそこ「面倒」だからこそ、卒論については細かなアドバイス以前に第一に「早め早めに手を付け、作業を進める」(6) べきと言われ、そんなことは誰だって分かっていることではあります。しかしなかなかそうもいかない。だから…
「もし今が夏休みを過ぎていて、卒業論文が待ったなしの状況だったとしたら、とにかく目次を見て、今あなたに必要なところを読んでほしい。後半には、卒業論文の執筆作業をするにあたって必要な項目ごとに、できるだけ具体的に、何に注意して、どうすればいいかを書いている。困っていることがあれば、何かのヒントになるかもしれない。」(7)
という励ましを本書から得たのなら、このさい真に受けてしまいましょう。
面白いのは第12章「下書きが書けたら」で挙げられているようなよくあるミスや確認すべき点が、分野が異なればあり得るミスの種類も違うのに、なぜだかどこか見覚えや聞き覚えのあるものだということ。
「なぜか毎年必ずあるのが、片仮名のニと漢数字の二の打ち間違い。(略)こういう明らかなケアレスミスは減点対象である。うっかりミスにすぎないじゃないかと思うかもしれないが、たとえば「三分ニナリ」(三〇パーセントになる)と「三分二ナリ」(三分の二である)ではまったく意味が変わってくる。こうしたミスがあると、資料をちゃんと読まれているか疑われることになる。」(193-4)
卒論や修論は(他の人のためではなく)まず自分自身のためともよく言われます。きちんと調べて考えて、真面目に書けばボツにならない文章を書く機会は、じつはかなり得難いものです。卒業論文のテーマを決め、最後の一文まで書き上げ、締め切りに間に合うように印刷・製本して提出し、審査を受けるまで——長い道のりですが、この本はそうした過程のどの段階においても心強い味方になってくれるはずです。
#ジャニス #LALA文庫 #卒論