「学振」申請書の書き方について -文系の体験談-

20210222日(月)
こんにちは、LALAの林です。
あっという間に2月も半ば・・・ 皆さんいかがお過ごしですか?

今日は、おそらく「旬」な話題、
日本学術振興会特別研究員の申請書作成がテーマです。
ちょうど昨年の今頃、私は申請書を作成すべく参考書や体験談を読み漁っていました。
そこで感じたのは、「文系の例が少ない・・・ということ。

色々な方の情報を参考にしながら作成しましたが、
「もし通ったら申請経験を共有しよう・・・」と思いました。
幸い面接免除採用となったため、この記事を書いています。
以下を念頭に、参考にして頂ければ幸いです。

・一般的なことを書いていますが、林が申請したのはDC2です
・「文系の体験談の1つ」として参考にしていただけると幸いです
・申請書のフォーマットや記入事項は年によって異なる可能性があります



-内容-
① 作成スケジュールについて
② 私が悩んだ点
  ・文系はどうやって図表を入れる?
  ・専門分野の常識や用語の解説はどの程度すべき?

↓ここから後半(近日up予定)の記事へ
③ レイアウトのコツ
④ 業績欄について
⑤ 参考図書



① 作成スケジュールについて

毎年の提出スケジュールは学振HPで見ることができますが、
大切なのは、学内締切の確認です。
来年度は5/17だそうです。(https://www.ocha.ac.jp/research/menu/jsps/special_researchers.html

学振の申請書は全7ページほどで、昨年の項目は以下でした。

・現在までの研究状況
・これからの研究計画:
(1)研究の背景 (2)研究目的・内容 (3)研究の特色・独創的な点
(4)研究計画 (5)人権の保護及び法令等の遵守への対応
・研究遂行能力
・研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等

・・・つまり、一稿仕上げるだけでも時間がかかります。
そして、初稿で仕上がることなどまずありません。

最低でも複数回、指導教授や先輩の添削を受けたいと考え、
逆算していくと・・・

5/17学内締め切り → 5/11申請サイト入力開始? → 5月上旬には2〜3稿を仕上げたい
→ 4月に初稿を完成させ添削を受ける →いつ書き始める?

私は3月に作成を開始し、4/5に初稿を完成させました。
他の方の体験談を読むと、私は遅いぐらいかもしれません。
また、自分が書く場所とは別に、指導教授の先生に書いて頂く箇所もあります。
当然、記入のお願いは早めにしておくべきです。
特に、「評価書」については、
何を書いて欲しいのか前もって先生と打ち合わせておくと、
自分で書く「アピールポイント」と矛盾なく仕上げることができます。




② 悩んだ点1:文系の、図表の入れ方

参考書や体験談は、とにかく「わかりやすく」見せるために図表を入れるように勧めています。が、私は 文章以外には楽譜くらいしか扱わない分野なので、
「何を図表にするべきか」に迷いました

私が採用したのは、
「専門外の人に、文章で理解してもらうのが難しいこと」こそ、図表で表す!
ということです。

例として、私の before(初稿) / after(提出版)をご紹介します。

ここでの目的は、研究テーマの核である、
「朗唱」がオペラの歴史の中でどのように変遷してきたか
を手短に説明することです。


before: 文章のみ

オペラには、劇を進行させる会話部分に用いられるレチタティーヴォ(=朗唱)と、アリア等のより音楽的な歌唱が
形式的に分かれて存在し、その比重は時代と共に変遷してきた。
19世紀に両者が融合し、朗唱と歌唱が混じり合ったシェーナという音楽形態が生まれた。


・・・必要情報を最大限に凝縮した文章ではありますが、
専門外の審査員には「なんじゃこりゃ? とりあえず面白くなさそう」と思われても仕方ないばかりか、次の文章を読まない限り、何に注目しているのかが伝わりにくいですね。

添削で指摘を受け、図を取り入れたのが after バージョンです。


after: 短い文章+図
語る様に歌う朗唱と、歌唱の作品内における比重は時代によって変化し、
19 世紀以降には、両者が融合したシェーナ scena という音楽形態が多用されるようになった。

林2221

※画質が粗くなってしまいすみません・・・


図にしたことで、申請者が「オペラ作品における朗唱と歌唱」に興味があり、
中でも19世紀を対象にすることが、一目で伝わります。
内容を深く理解してもらう前に、この「なんとなく把握できる」という好印象を持ってもらうことが大切です。

また、これは全体に言えることなのですが、
「図表を用いても構いませんので、わかりやすく記述してください」という但し書き=「図表を用いてわかりやすく説明しなさい」と捉るべきです
但し書きは、そのまま審査員が知りたいこと、と考えると間違い無いでしょう。



② 悩んだ点2:研究背景はどの程度説明すべき?

当然、どの研究にもその着想に至るまでの膨大な先行研究など背景があります。
しかし、限られたスペースや、審査員が1つの申請書にかける時間を考慮すると、
あまりミクロな背景ばかり書いても仕方がない。
審査されるのは、「あなたは何をやりますか?」という一点です。

実は私自身、それを簡潔に言葉にすることが苦手です
テーマの周りから説明しているうちに、
本当に自分がワクワクする研究の「核」をうまく伝えられない
という悩みがありました。

そこで活用したのが、「ブレインストーミングです。
自分の研究について、自分が知っていること、何が面白いのか、何が好きなのかを
洗いざらい書き出す作業です。
そこで出てきた無数の言葉(word数ページ分集まりました)から、
自分が本当に面白い!ワクワクする!と思えるキーワードを選び出し、
組み合わせて文章を作って
いきました。

これは、考えをまとめる事に非常に効果的であるだけでなく、
自分の意欲を高め、無駄な言葉を省く方法でもあります。
自動的に、研究の背景についても、必要最低限の記述に絞られてきます。
ついでに、研究の題目を考える際にも有効ですので、是非ともやってみてください。


・・・長くなってきました。

後編では、「業績欄」の書き方やレイアウトについて、
お話ししたいと思います。